15時(2)
「それに帰ると言ってもどうやって帰るつもりだ?」
「え?」
「飛行場は封鎖してある。残念だったな」
完全に悪役の台詞になってますよと口に出さないように気をつけながら、ゆっくりと立ち上がる。
「小出さん、手を」
「あ、はい」
『モニカも』
『うむ』
二人の手を取れば準備は完了だ。
「では帰りますね。転移」
声と同時に三人の姿はその場から消えた。
私の転移魔法は「立ち寄ったことがあり、思い出せる場所なら移動可能」という、結構ぶっ壊れ性能な魔法。残念ながら異世界とこちらを行き来することはできないけど、神奈川と福岡くらいは簡単に移動できる。
もちろんこうしてモニカと小出さんを一緒に連れて移動するのも「ちょっと魔力を多く消費するかな」程度。この「ちょっと」というのは普通の人のほぼ全力に近いけど、私の魔力量的には誤差の範囲。難点を言えば、一度に転移できる人数はせいぜい十人まで――直接触れていなければならないのでそのくらいが限界――ということと、転移先に転移する分の空きスペースが必要ということ。あとは、転移先に誰かいたら、驚かれることくらいかな。
「で、いきなりここに戻ってきたわけか」
「帰ってきたことがわかりやすい方がいいかなって」
「……まあいい。報告を頼む」
青山さんの言葉に小出さんの方を見る。
「え?私、ですか?」
「他に誰か適任がいますか?」
「あはは……そうですね……えっと、あっ、その前に」
「うん?」
「ちょっとだけ野暮用を済ませたくて」
「わかった。すぐに済ませろ」
ささっと部屋を出て行った。ああ、着替えに行ったのね。全身丸洗いしたけど、それはそれ。気分的には着替えたいよね。
「ちゃんとした報告はあとでいいとして、片付いたのか?」
「ええ。ただ……向こうで激怒されまして」
「激怒?」
「はい。この事態を引き起こしたのはお前たちだろう、って」
「そうか……スマン」
「謝られても」
「それでも、だ。一応情報は流しておいたが、ちゃんと伝わったかどうか確認し切れていなかったのはこちらの落ち度だ」
おお、と見直した。ここにちゃんと、まともに判断をしてくれる大人がいた、と。
が、それはすぐに覆された。
「ん?ちょっと待て、今通信が……博多の加藤か?何を言って……があああ!」
雰囲気的に博多リージョン支部あたりから連絡が入ったんだろうな。
「すまないが、チャットに入れ……ないよな。BCポート、ないんだったな」
「ええ……ああ、でもこの子なら」
「この子?」
「はい。ウィル、青山さんの言う、チャットを表示できる?」
「問題ありません。映像を投影します」
ヴン、と鈍い振動音の後、空中に映像が投影された。
「こちらのチャンネルに接続すればよろしいですか?」
「え?あ、ああ……って、プライベートチャンネルがなんで見えてる?」
「ウィルだから」
「は?」
「ウィル、いいから繋いじゃって」
「はい」
「どれだけの損害を被ったかわかっ……ん?何だ?誰だ?」
「認証を回避、横浜リージョン・青山支部長の秘匿回線を少しお借りして、本通信を確立しました。博多支部長、実里様への暴言はログに記録いたしますので、言葉選びにはご注意を。申し遅れました、私は実里様によって造られました人工精霊、ウィルと申します。実里様に代わり、チャットへの接続を行いました。改めて状況の説明をお願い致します」




