14時(6)
「小出さん」
「な、何ですか?ってうひゃああああ!」
「っと、仮にもハンター協会の職員なら、モンスター相手に情けない悲鳴を上げないでください」
「モ、モ、モ、モ、モンスター相手に、ではないです!恐ろしい速さでの移動、そう、急加速とか何十メートルも跳ぶとか、そういうのに驚いているだけです」
なるほど。このご時世ではテーマパークの絶叫マシンなんかもないだろうから、こんな感じの加速の変化に慣れる機会も少ないか。じゃあ、解決策を提案しましょう。
「なら、置いていってもいいですか?」
「それは困ります!」
「うわあああ!いきなり抱きつかないでください!う、動きが!」
「うひゃあああ!」
地上三十メートルほどに飛び上がっている途中でいきなり姿勢を変えられるとさすがの実里も焦る。
「きゃあああああ!」
「う、うるさい!」
バランスを崩して真っ逆さまに落下していても私は動じない。特に何もないのだから、地面に激突する直前でクルリと姿勢を戻してふわりと着地するくらい造作もない。魔法やらなんやらを使いこなせるようになってから地面に激突したのは……魔王が飼い慣らしていた暗黒竜三匹に叩きのめされたときくらいだったかな?さすがにアレは衝撃が強すぎて反応が追いつかなかったね。
そんなことを思いながらすぐそばのオークの集団に向けて駆け、そのまま当たるを幸いに吹っ飛ばしていく。私の通ったあとには細切れになったオーク、いや、オークだったモノしかない。
「ギャオウ!」
集団の中央にいたひときわ大きな個体――いちいち確認する気はないけど、オークリーダーかジェネラルくらいかな?――をそのまま粉砕すると、恐慌状態に陥ったオークがちりぢりに逃げていく。
「次!」
「あ、あの、実里さん……」
「何でしょうか?」
「その……えっと……あの……ちょ、ちょっとだけ」
「ちょっとだけ?」
「も、も……」
「ここに置いていけばいいかしら」
「あうううう」
繰り返し行った改造により、私の五感は人間のそれを遙かに凌駕するレベルになっている。だから、小出さんが耐えきれず……というのは気付いている。人間の尊厳的な意味でどうにかしたい気持ちと、ここに置いて行かれたらどうなるかという予想。彼女の天秤は、人間の尊厳をちょっとだけ捨てる方向に傾いた。
「えと……目立たないように、とかできます?」
「大人が高校生に聞くことじゃないですよね?」
「背に腹は代えられないので」
実里はため息を一つついて、スルリと大きな布を出した。色合いは協会職員の制服の色によく似ているから、腰回りに巻けば、スカートにしか見えないだろう……たぶん。
「それから……乾燥」
「おお……」
私の取り出した布は防水性があるので、これを巻いておけば仮にまたやっちゃっても、パッと見ではわからない状態が維持されるかな、と。そして現時点の不快感は濡れた部分を乾かせば解消できるはず。
「って、湯気?!」
「出るねえ……」
場当たり的な対応と言うなかれ。こんなことは想定していないのだから。全く、大の大人が何やってんのよ。
「じゃ、次行きますよ」
「ひゃい……」




