14時(4)
「え、なにコレ」
「うーん、なかなかすごいというか」
「え?え?」
小出さんに説明する余裕はなし。すぐにその場を離れるとドスドスと次々黒い矢が刺さり、蜂の巣みたいになっていく。怖っ。
「あの!あれ、なんなんです?!」
「うーん……わかりやすく言うと……空間消失?」
「へ?くう……しょうし……つ?」
「うん。あたったらヤバイ奴」
「きゃあああああ!」
「わわっ暴れないで!落ちちゃうって!」
「ひっ」
現在、高度百メートルほど。ここから落ちたらヒト型の赤い染みになっちゃうよ!生きてたら治せるけど、気を失うくらい痛いはずだよ!
「ど、どうするんですか、あれ」
「大丈夫よ、なんとかするから」
「なんとかって!」
とりあえず撃ってくる矢の前に強度を変えた障壁を展開し、どのくらいで壊れるかチェック。
もちろん、そのまま馬鹿正直に展開したら、威力を上げてくるだろうから、とか色々考えないとね。
「よし、こんな感じね」
程々の強度にして角度をつけてやると、謎の黒い矢(?)を逸らせるとわかったので、全部空に向かうように角度を調整。
飛行機が飛んでないからできることね。私たちが乗ってきた飛行機?小出さんが「ヤバいから逃げてください!」って連絡したら離れていったわ。
「さて、それではここからが本番よ!」
「うひょぃぃぃぃぃぃ!!」
小出さんの、嫁のもらい手がなくなりそうな悲鳴を聞きながら、黒い球体と同じ高さに設置した足場&黒い矢を逸らす障壁の内側で準備開始。
横浜と同じようにあの中に筒状にした結界を伸ばしていこうと思うけど、当然そこに攻撃が集中するだろうから、そのための対策もしていく。
ドス、ドス、と障壁に黒い矢がぶち当たる、なかなか不気味な音を聞きながら球体に突っ込ませる魔法を構成。
「よーし……行け!」
黒い矢を逸らす障壁を周りに展開した結界を伸ばして行くと、予想通り総攻撃を受ける。
「うわわわ……これはなかなか」
間違って地面に落ちたらどれだけの被害になるか想像もつかない量が撃ち込まれるのを丁寧に角度を調整して空へ。そしてグングン伸ばした結界が球体の中へ。
「む……これは!」
「どうしたんですか?!」
「結構ヤバいかも」
「えええええ!」
横浜のときと違い、突っ込ませた結界が浸食されて、ボロボロに崩れていく。まあ、ただの魔法なので痛くも痒くもないんだけど、球体の中の様子を探りづらい。
「くうう……こっち……違う、こっちか?!」
「何が起きてるんですか?!」
黒い矢の攻撃が激しさを増していき、ちょっとだけ障壁にヒビが入っているのをみて小出さんの口から魂がはみ出していたので慌てて押し戻すべく、障壁で口を塞いでおく。大丈夫よ、障壁は十枚くらい重ねてあって、その二枚目まで突破されただけだし。もちろんすぐに突破された分はさらに強い障壁で展開しなおしてるからね。
なんて詳細を話す余裕はありません。ちょっと小出さんの顔が紫色になりかけたので障壁は解除。ゼエゼエ言っている件についてはあとで謝ろう。
「内部を探るための探知魔法」
「探知魔法までのルートを守るための結界」
「自分たちと結界を護るための障壁」
「これらを維持しながら球体の中にあるだろうコアを探す」
全部やらなくちゃあならないのが「勇者」のつらいところね。イタリアのギャングの幹部だってここまで同時進行の作業はしないでしょうし。そんなわけで、小出さんの質問に答えてる余裕はないのです。




