14時(3)
私の展開した障壁は口と鼻を塞ぎつつ、頭全体を覆う。
この障壁には「酸素を外へ放出する」性質を与えた。その結果、地竜の体に比べてとても小さな障壁の中はあっという間に酸素がなくなる。
そしてドラゴンが呼吸で吐き出した息の中からも酸素がどんどん失われていく。一部の特殊なドラゴンは呼吸自体必要としないと聞くけど、地竜は呼吸を必要とするタイプ。そして酸素がどんどん失われていけば、すぐに酸欠が始まる。
苦しさのあまり、ドラゴンは暴れ、なんとか障壁を壊そうとするが、私が「コイツを倒すためにこのくらいの強度が必要」と判断して展開した障壁。多少どこかにぶつけたところでヒビすら入らない。もしも、この障壁を壊そうと思ったら、壊すほどの勢いを出した時点で、頭が潰れるだろう、ってくらいに頑丈。
ガン!ガン!と地面に叩きつける勢いもだんだん弱くなっていったところで「あとはトドメね」と姿勢を正すと、小出さんがブルッと震えた。
「トドメって、何をするんでしょうか?」
「言葉のアヤよ。特に何もしないわ」
「え?」
だって、放っておいても勝手に死ぬんだから、そのまま放置でいいでしょう?それに他にも面倒臭いモンスターはいっぱいいるんだから。
そう言いかけたところで、急に薄暗くなったので、慌ててその場を離れる。
直後、ドガシャァッと乗ってた建物が砕け散った。
「ガ、ガァァ……」
軽く二十メートルはありそうな巨人が振り下ろした拳の結果がこれ。横浜同様に黒い球体があり、そこからここまでの間がまっすぐ更地にされている。
「あわわわ……み、実里さん」
「なに?」
「あ、あんなの……あわわわ」
「問題ないわ」
「え?」
「ただ単にデカいだけ。動きも鈍いし、良い的よ」
人差し指を突きつけてスイスイと空中に立体図を描くと、それに合わせて何本かの線が巨人の周囲に描かれる。
そして、パチンと指を鳴らせば、それらの線と線を繋ぐように面が現れ、そのまま巨人を分断、細切れを囲んでいく。
「ギャォォ……」
僅かに悲鳴を上げて、それでおしまい。障壁を解除すると、辺りが血の池になって苦情が来るだろうからそのままにしておく。
「小出さん」
「な、なんでしょうか?」
「あれ、二十四時間後に解放されてビチャッて落ちるから、ちゃんとこっちの人に伝えてね」
「二十四……ええええええ?!」
「さ、次行くわよ」
「あ、あのっ!」
「何?」
「明らかに大きさがおかしいんですけど?」
「圧縮してるから」
「なるほど圧縮……って、ちょっと!それじゃ、一気にドバッと?!え?うわわわっ、ちょっ、あの?!」
何が起きるか想像したらしく、悲鳴を上げる小出さんに少々うんざりしながら黒い球体の方へ向かう。
「ガアアアアッ!」
「ホイッと」
これまた巨大な狼が襲ってきたけど、全身を障壁の箱で包み、箱を小さくしていけば身動きがとれなくなる。さらに小さくしていけば、あちこちからバキボキと音がして苦悶の表情に変わる。
さらに小さくすれば、メキメキと潰れていき……ただの赤黒い箱のでき上がり。
「アレも二十四時間」
「ええええ……」
「次!」
黒い球体から出て好き勝手な方向へ歩みを進めている巨大なモンスターを追いかけ、片っ端から障壁の箱に収め、分断して片付けていく。最終的な片付けは博多の人たちにお任せします。正直なところ、素材としての魅力はあまりないモンスターばかりなので。
「これでデカいモンスターはあらかた片付いたかな?」
「み、みたいですね」
「じゃ、あの黒い奴……?!」
横浜同様、内部を破壊しようと思ったんだけど、それを察したのか、球体から黒い矢が飛んできたので慌てて回避。地面にドスッと刺さり、刺さったところが黒く消失した。




