14時(2)
「ひゃあああああ!」
ドス、と着地。抱えていた小出さんの悲鳴による鼓膜へのダメージが一番大きいかもね。転移したのは地上二、三メートル。大した高さでもないのに、悲鳴をあげないでほしい。聞きつけてモンスターが集まってきちゃってるし。
『モニカ、剣を』
『うむ』
とりあえずこれだけあれば十分かなと、四振り渡しておく。
『ウィルもよろしく』
『心得ました』
『何かあったらすぐに連絡を』
『了解』
『じゃ、いきましょう!』
モニカは剣を抜くと同時に駆け出し、ウィルがそのあとを追う。それを軽く見送りながら、小出さんを担ぎ直す。
「こっちも行きますよ」
「行くってどこひゅぅわぁぁぁぁ!」
「軽くジャンプしただけで叫ばないで下さい」
「だって!だって!」
「舌、噛みますよ?口塞いでて下さい」
「無理ぃぃぃ!!!」
錬金術で塞いでやろうかと思ったけどやめた。きれいに元通りにするのが面倒なので。
そしてやや高めの建物の上に飛び乗り、状況確認。
「とりあえずあっちね」
「え、ええ」
「行きます!」
ドンッと飛び上がり、空中に次々足場を作って跳んでいく。
「ひょえええええ」
「ああ、もう。少し静かに!」
「だってえええええ」
と、その様子に気付いたらしい、でっかいモンスターがこちらを見た。どう見ても小出さんの悲鳴に反応したんだろうな。
「鑑定……地竜」
翼がなくて空は飛べないが、地上を突進する速さは空を飛ぶドラゴンに劣らず。そしてドラゴン種だから、もちろんブレスも吐く。
「地竜の場合、そのブレスが酸性の毒ガスだったりすることが多い……だったかな!」
「えええええええ?!」
そんな説明を軽くして、小出さんが悲鳴を上げてる間にあちらは準備万端。大きく口を開いてブレスの体勢だ。
「きゃああああ!」
「ああ、もう!静かにしてください!」
「だって!だって!」
そんなやりとりの間に地竜はその腹を五割ほど膨らますほどに息を吸い込んでいた。どんだけ殺る気なのよ、って話。
「どうするんですかああああ?!」
「こうするのよ!」
酸性毒ガスブレス自体は大して速くもないので、避けるのは簡単。ただ、周囲への被害が甚大になる。幸運にもここまでブレスを吐かれることなく、押しつぶされているだけだった、つまり瓦礫をどかせばすぐに復興に書かれる状態の街が、いきなり人も住めない毒の沼になってしまったら色々困る。というか多分理不尽に私が怒られる。
「その臭い口、塞いでやるわ!」
カカカ、と正確に型取りして、地竜の口の周りに障壁を展開。
ブレスを吐くと同時に口を塞いだらどうなるかというと、行き場のなくなったブレスが地竜の体内へ戻り吹き荒れる。もちろん、そんなことで地竜がどうにかなることはない。
そう、私の真の狙いはそこではない。
しばらくするとズシンズシンと地竜が足を踏みならし、頭をブンブン振り回しながらのたうち回りはじめた。うんうん、苦しいだろうねえ。




