11時(3)
「まず考えなければならないのはあの火葬場。今後もダンジョンが増えるのだろう?」
「そうですね」
「そしてそれはここだけじゃない。世界中にここと同じような場所がいくつも、それこそ国の数、都市の数だけある。そしてそこでは」
「同じように亡くなった方を埋葬しているってことですね」
「そうだ。そして死亡原因は様々。病気や事故もいるし、それが一番多いはずだな。だが、少なくない数のダンジョン絡みの死者がいる」
「ダンジョンが現れるまでの期間は三十年前後だったか?」
「詳しくはわかりませんが、そのくらいかかるとか」
「世界中にダンジョンが現れたときも大パニックだったと聞くが、これからそれ以上のことが起きるのか」
「そうですね……異世界でも、こういう……ダンジョン絡みで亡くなった方を一箇所に埋葬って多分してないので」
一応その辺はモニカに聞いていたけど、モニカの答えは「わからない」だった。
ダンジョン絡みで死んだ者云々は、長い間の経験則からで、具体的に調査したものではない。ただ間違いなく、そういうことが起きることだけが知られている。その程度だそうで、ダンジョンに放置が常識。
「しかし、火葬した灰からもダンジョンができるとなると、本当にマズいな」
「防ぐ方法は遺体をダンジョンに放り込むくらい、というのがまたなんとも難しいな」
「何か他にないのか?」
そう言われてもそれが異世界の常識で、その異世界の常識がこちらに持ち込まれてしまったわけで。そもそも、ダンジョン発生までが数十年かかる時点で色々な検証をした人はいない。検証しようとする人がいても、結果が出るまでにその人が生きているかどうか怪しいしね。さらに確実にダンジョンができるだろう危険な行為をするのはいわゆるマッドサイエンティストくらい。当然そんな連中はまともな記録は残さないか、残していたとしても騎士団総出で捕縛に行って資料は全てその場で焼却とかされるだろうから、何もわからないのが実態らしい。
ということで、何とも答えようがない、と言おうとしたところで重苦しい沈黙を破るように、会議室のドアが鋭くノックされた。
「失礼するよ」
「「支部長?」」
ノックの返事を待たずに入ってきたのは青山支部長だった。
「ううむ、なるほど。それであんなことが起きたのか」
村上さんが私から聞き取った内容を整理したものを協会のプライベートネットワークで青山さんと共有してもらったんだけど、とても信じられないと改めて質問し始めたおかげで、同じ話をもう一度話す羽目になった。
……解せぬ。
この調子ではまた何度も同じことを話さなければならないのだろうか。
「とりあえずコレは横浜支部だけで収まる話じゃないな」
「ええ」
「上にも流すのは当然だが……村上、もう少し整理した資料を起こしてくれ」
「わかりました」
「田島は北と東の出張所に行って、それぞれに話を」
「え?ネットに流して「馬鹿、こんなの絶対信じないだろ?」
「それもそうか。わかりました。すぐ行きます」
「頼んだぞ。で、十倉さん」
「は、はい」
「ここからは君の予想でいい。あの火葬場に隣接する埋葬所。あそこにできた大量のダンジョンをどうにかしないとまた同じことが起きるかな?」
「うーん……」
そう言われても、異世界でも起きたことを聞いたことがないとモニカが言っていた時点でよくわからないんだけど……ん?
「ウィル、どうしたの?」
「発言の許可を、実里様」
「ほう、この丸いのが人工精霊か」
「はい。人工精霊のウィル。叡智のウィルです」
「フム。ウィル、何か意見があるならどうぞ」
「ありがとうございます。では、あの周囲の空間の解析結果がこちらになります」
ウィルが正面にグニャグニャと波打っている三次元グラフを投影する。
「ウィル?」
「実里様ならコレが何かわかるかと」
「え?ああ……うん」
わかる。空気中に漂う魔力の密度だ。
「ん?え?あ、そういうことか」




