11時(4)
「えーと、すまないが、私もわかるように説明してもらえないか?」
「ああ、えっと……ウィル、あのダンジョンの周辺のはある?」
「はい、こちらに」
「それと、あの黒い球体があったときのは?」
「こちらに」
「それと……そうね、この周辺百メートル四方くらい」
「こちらです」
目の前に四つの三次元グラフがならんだ。
「コレは、その空間に漂う魔力の密度を示しています」
「魔力?」
「はい。まあ、細かいことはおいといて。まず、現在のこの部屋の様子ですが……見ての通りです」
「一箇所、飛び抜けているのだが」
「私とモニカとウィルですね。ただ、色もよく見て欲しいのですが……」
「うーん……なだらかなところは青。そして君たちのところが緑でとんがってる」
「はい。これは強い魔力が存在しているけれど、安定しているということを示しています」
「なるほど」
「で、これが一昨日と昨日、私たちが行っていたダンジョンの周辺です。私たちの魔力を消した状態で出しています」
「この大きな、お椀を伏せたような黄色いのがダンジョンか?」
「正解です」
「で、こちらとこちら」
埋葬所周辺の様子を示すと、どうやらそれだけで理解ったらしい。さすがハンター。
あの黒い球体は、密度が高いのは当然として色が赤い。そして、埋葬所に密集しているダンジョンも色が赤い。
「この赤いのは安定していないってことか?」
「そうです。魔力の強さがゆらゆらと揺れていて不安定になっています」
「ええと、ウィル、君に聞きたい」
「はい、何なりと」
「今はこの……上にドデカい不安定なものがない状態だよな?」
「その通りです」
「だが、下の状態は上にアレがあろうとなかろうと変わりなし。そして、単独で存在するダンジョンの状態と比べ、明らかに不安定。つまり……」
青山さんが一つ大きな息を吐いてウィルに問いかける。
「このままだとまたアレが出てくる可能性がある。違うか?」
「確率は非常に高いと推測しています。おそらく七十%以上」
「そりゃ大変だ。どうすりゃいい……って、単純な話だな。ダンジョンを潰せばいい。違うか?」
「ご明察の通りです」
また大きく息を吐いて、青山さんが立ち上がった。
「色々急いで動くことにするぞ」
「あ、はい。どうぞ」
魔王討伐とダンジョン破壊の経験があると言え、実里はまだ高校生の年齢。高度な政治判断や組織運営なんて、荷が重すぎる。面倒くさい。ここは大人に全部丸投げするのが、お互いのためよね。
「これは勝手な頼み事だが……これからも横浜リージョンにいてくれるか?」
「え?」
「他へ行かないで欲しいということだ」
「えっと、それはまあ、行くあてもないので構いませんが」
「助かる。それと、おそらく、あのダンジョン群を潰してくれという話が出てくるはずだ」
「はは……やっぱりそうなりますよね」
「だが、今回のことと、今後について上に話さなければならない。しばらくは何もしなくていい。っと、横浜に残ってくれるなら周辺のダンジョンに行くのは構わないどころか、むしろお願いしたい」
「わかりました」
「それと、住むところは……小出、手配しろ」
「は、はいっ」
覚悟はしていたけど面倒なことになったなと思い席を立とうとしたところ、会議室のドアが再びノックされ、協会職員の男性が一人入ってきた。
「どうした?」
「その……門のところにおかしな連中がやって来たと」
「おかしな連中?」
「あまりにも風体がおかしいので念のため門は封鎖しています」
「どういう連中……なんだこれ?」
ネットで監視カメラ映像でも確認したのだろうかと思い、ウィルに見せてもらった。
『モニカ、これ』
『まさか、追ってきた?どうやって……って、考えるまでもないか』
『そうか。転移したときの扉、残ったままだったかも』
『自然に消えるだろうって放っておいたからな。まだ自由に行き来できるのかも知れん』
『アレをくぐってきたのかあ』
『どうする?』
『無関係を装う!』
「ちょっといいか?」
「はい、なんでしょうか?」
「君たちが今話している言葉、門の前に集まってる連中の言葉によく似ているんだが?」
逃げ場が無くなった件。




