11時(2)
「私もこちらに帰ってきてからモニカから聞かされて知ったのですが」
「うん?」
「帰ってきてから?」
「ええ。向こうでは「魔王を倒すために知っておかなければならないこと」は教わりましたけど、「魔王を倒すにあたりとりあえず知らなくてもいいこと」は教わりませんでしたので」
「そりゃまた極端だな」
「私たちを召喚した人たちもあまり余裕はなかったんでしょう。んで、本題ですが……」
ダンジョン内もしくはダンジョンから出てきた魔物に殺されると、その死体がダンジョン化すると伝えたら二人とも頭を抱えはじめた。
「『ダンジョンから出てきた魔物』と言っていたが」
「ええ。向こうではダンジョンの中だけでなく、ダンジョンの外にも魔物がいました」
「違いは?」
身を乗り出した田島さんにどう答えようかとモニカを見て、すぐに諦めた。渋い緑茶と和菓子のマリアージュにうっとりしていて役に立ちそうにない。あとでデコピン三発くらい食らわせてやろう。
「……ぶっちゃけ私にもわかりません」
「は?」
「色々見分け方があるらしいんですが、「何となくわかる」のだとか」
「そうか……それも魔王を倒すためには必要ない知識ということだな」
「なるほど。それで、そのダンジョン化するのは、こちらでも?」
「でしょうね。どう見てもそうとしか言えないことが起きてますし」
日本で最初にダンジョンが発見されたのが横浜にある薊川寺。
「それはまあわかるが、世界中に広まったのは?」
「ええと……ウィル、例のデータを表示して」
「承知しました」
フォン、とウィルが昨日確認したデータを表示した。
「こちらです。一人、海洋散骨したとの記録がありました」
「海洋散骨ということは……」
「太平洋を海流に乗って、アメリカ西海岸までか」
「そのあとぐるりと回って戻ってきて……ハア、太平洋沿岸は全部影響を受けるというわけか」
「ん?つまり、ハワイに出現したダンジョンというのは」
「そうですね。そういうことだと思います」
「そしてダンジョンが現れてしばらくして、モンスターがふらりと迷いでたところにアメリカとロシアの大統領会談。高官が殺され……おそらく遺体はそれぞれの故郷へ埋葬されたはず」
「そしてそこがダンジョン化」
「ダンジョンのことが知られて以降はダンジョン探索中に亡くなった方もいるでしょう。そして、ご遺体を引き上げてきたら」
「増える一方か」
二人揃ってペチンと手を額にあて、天を仰いでしまった。お手上げ状態だ。
そして、先に村上さんが復活した。
「その件について、そちらのモニカだったか。何か釈明はあるのか?」
もう一度モニカを見……煎餅のパリパリとした食感を堪能しているので放置しよう。
「ないですね」
「いや、本人に聞きたいんだが、言葉、通じるんだろう?」
「通じますけど、そもそも論として、彼女は私たちを召喚するにあたって責任ある立場ではありませんでしたから」
「ほう」
「どちらかというと私たちの訓練、日常生活のサポートがメインで、こちらに来たのもある意味事故です」
「なるほどわかった」
「ああ、そこに関しては俺たちは理解した」
んん?




