11時(1)
「なるほど」
「にわかに信じがたい内容ではあるが、起きていたことは事実だからな」
「状況の把握、分析にあまり時間をかける余裕が無く、イチかバチかで、か」
「それで上手く行ってしまうというか、何とかなったわけで結果オーライにしたいんだが……」
そのまま協会の会議室まで連れて行かれ、何があったか、何をしたのか一部始終を話したけれど、やはり簡単には解放してくれそうにないなと私はため息をついた。
今さらながら、言葉が通じないのをいいことに、茶菓子でくつろいでいるモニカがうらやましい。私の空間収納にモニカの緊張感はしまってないよね?ここまで来るときも初めて乗る車に大興奮していたし、こちらの世界を楽しめているのはいいことだと思う。けどやっぱりなんか納得いかないので日本語の勉強を最優先でやってもらおう。
「何をどうしたら、これだけのことができるようになるんだ?」
「登録時に聞いていた内容、山奥でひっそり暮らしているとか、山篭もり的なことをすると強くなる、マンガ的展開が現実になっているのか?」
そうだよね、私たちの強さに関して疑問に思うのも当然だよね。でもそれはマンガの世界だけで充分。
「ええと……何から話せばいいのか……うまく整理できないんで、思いつくまま話しますね。質問があればどんどん聞いてください」
前置きしてから話を始める。
クラス全体が異世界へ転移したこと。
ここで同席していた全員が絶句した。
魔王を倒すよう強制――じゃない、協力を依頼されたこと。
ここで同席していた全員の開いた口が塞がらなくなった。
どうにか倒したが帰ってこられた、いや、生き残れたのは私一人だけだったこと。
ここで同席していた全員が涙ぐんだ。
ついでにモニカも連れてきちゃったこと。どうしてそうなったかというと、こちらに帰る手段はどうにか用意できたけど、あちらの国は実里を帰すつもりが無くほとんど罠にはめるような感じで追い詰められ、やむを得ずモニカと共にこちらへ帰ってきたこと。
「なるほど。あのニュース記事は、君たちだったのか」
「ニュース記事?私のこと、調べたんですか?」
「そりゃ調べるよ。どう見ても日本人で高校生くらいの歳のくせに世の中のことに疎すぎる上、自分たちは山奥で暮らしていてIDを持っていませんなんて、うさんくさすぎるだろう?」
「それは……まあ」
「偽名でないことを祈りつつ調べてみたら引っかかったのが百年前のニュース記事。こりゃ何か面倒なことがあるかなと思っていたら、思った通り、いや思った以上だった」
「あ、あはははは……」
私個人、モニカ個人に関していえば、大して面倒なことにはなっていないはずだった。ちょっとIDのない人間が二人いただけ。そのくらいのことなら、こんなご時世には珍しくないらしいし。
でも、そうならなかったんだよね。
そう、ここまでは試合開始直後の互いに様子見の世間話の延長のような軽いジャブ。本当に面倒なのはここからよ。




