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  作者: ひじきとコロッケ
2126年4月20日
43/65

20時(6)

 ちなみに日本のメディア各社はどういうわけか、判で押したように日本政府を批判する記事しか見当たらなかった。曰く、アメリカとロシア両国に謝罪するべきだ。曰く、日本の平和憲法が全く考慮されていない点をもっと主張するべきだ、等。

 高校生という、社会情勢とかそういうのにまだ疎い私でもわかるくらい、馬鹿馬鹿しい内容だ。


『実里、平和憲法とはなんだ?』

『えーと……憲法はわかる?』

『ああ。サルヴァート王国にもあったが、あらゆる法律の基となる法律だよな?』

『そう。それで、この日本にも憲法はあって……細かいところは省略するけど、外国に戦争を仕掛けません、というのが明文化されているのよ』

『ほう、それはまたなかなか思いきった内容だが、大丈夫なのか?そんな憲法、聞いたことがないぞ?』


 あちらの世界では国と国の戦争なんて日常茶飯事だから「こちらからは戦争を仕掛けません」などと宣言したら侮られるだけだろうというのがモニカの見解。


『日本は周りを海に囲まれてるから、攻め込むのはちょっと面倒なのよ』

『なるほど、地の利を最大限に活かし、国力を強化するための憲法なのだな』


 モニカの認識だと、軍備に金をかけない分、国民のために色々できるのはいいことだと思ったらしい。実態は違ったと思うけどまあいいかと流した。


『しかし妙だな』

『ん?』

『この国が平和憲法を掲げていると言っても、他国には関係のない話だろう?こちらの世界では「我が国には平和憲法があるぞ」と声高に叫ぶと、よそでやっている戦争は終わるのか?』

『そんなことはないわよ』

『では、この記事は一体……』

『モニカ、こういう話を聞いたことがない?行動力のある無能が一番厄介』

『聞いたことがあるぞ。味方にいると足を引っ張られて困ると』

『それと似たようなものよ。声がデカくて情報発信力が高いくせに、何言ってるのかわかんない連中。味方にも敵にもしたくないものね』

『なるほど……ん?敵にもしたくないとは?』

『理解するだけ無駄よ』

『はあ……よくわからんが、とりあえずわかった』


 相手をする気力もなくなるって意味だからね。

 さて、色々な情報が集まったところで、この百年の間に何があったか整理してみよう。


『まず、私たちが召喚された』

『はい……』

『申し訳なさそうにしないで。モニカ一人が反対しても意味はなかったんでしょ?』

『それは、うん、そうだな』

『そしてその後の訓練などで死亡。同時に元の世界へ戻された』


 生きて戻ってきた私以外は全員があの教室へ死体となって戻ったか……完全にホラーだし、その後のことを考えるとどんな怪談よりもタチが悪いわね。


『そして、それらは全て何らかの形で埋葬された』

『しかし、少なくない数がダンジョン内での死亡だったため……』

『ある程度経った頃に死体からダンジョンが発生。そしてダンジョンからさまよい出たモンスターによって、大国の政府高官が殺された。そしてそれがきっかけで世界大戦が勃発』


 つくづく人類は戦争が好きなんだね。そう言えば、何かに書いてあったっけ。「平和とは戦争と戦争の間の少し穏やかな状態のこと」って。


『ダンジョン発生という事象自体は比較的早く知られた一方で、ダンジョン内で死んだ場合の注意点を知らないから、弔うために連れ帰って埋葬』

『結果、そこから新しいダンジョンが生まれた』

『じわじわとダンジョンが広がっていく中、戦争も激化の一途。そして、どうにか終戦を迎えた頃には、世界中にダンジョンが広まっていて、人々の生活を脅かし始めた』

『そこで安全な場所を壁で囲うようになった……これはサルヴァートでも同じだな。魔物に襲われにくくなるように、サルヴァートでも大きな街は高い壁で囲んでいる』

『そして、ダンジョンのモンスターを狩る、ハンターとその活動を支援するハンター協会の設立か。百年もあると色々起こるのねえ』


 さて、それではこれからのことを考えよう。


『とりあえず、状況を把握することはできた』

『はい。その上で今後どうするか、ですね』

『ええ』

『実里、私はダンジョンを潰して回りたい。それが王国の犯した罪に対するせめてもの贖罪だ』

『ええ……却下』

『え?』


 モニカにしてみれば、自分たちが引き起こした事態だからどうにか解決したいと考えているのだろう。でも却下だ。


『ウィル、現時点で世界にダンジョンはいくつあるの?』

『確認されているだけで八百程になります。あくまでも確認されているだけで、未発見、またはこれから発生するものがどの程度になるかは不明です』

『モニカ、ダンジョンが両手で数えられる程度の数ならともかく、千に届きそうな数になってる時点でダンジョンを潰して回るのは現実的じゃないわ』

『うう……』


 異世界で私は魔王と戦い、勝利している。しかもほぼ単独での勝利。

 異世界でのダンジョン探索は基本的に素材集めが主だったため、最深部までいくことはなかったけど、既にダンジョンありきで社会が回っていた異世界と、ダンジョンが生まれたばかりのこちらの世界。ダンジョンの難易度的にはこちらの世界のダンジョンの方が低いだろうと予想している。ダンジョンは時間をおくと成長して難易度が上がっていくものらしいので。つまり、私たちならダンジョンの奥にあるダンジョンコアを破壊すればダンジョンを潰せるだろうとも思っている。

 しかし、数が問題だ。

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