20時(4)
『ええと、ハワイとサンディエゴというのは?』
『ウィル、地図を』
『こちらになります』
『えーと、これはどう見ればいいのだ?』
『えっとね』
ざっくりと世界地図の見方を説明し、現在二人がいる位置と、記事に載っていた地名の位置関係を説明する。
『海の向こう側に……どういうことだろうか?』
『そうね』
どんなにクラスの仲が良くても、高校生が実家の墓がどこにあるとかいう話をした記憶はない。そもそも、そういう話をする高校生などそうそういないだろう。ただ、ほぼ間違いなく言えるのは、南の島とかアメリカ西海岸に縁、すなわち墓地がありそうな者はいなかったと思う。
『もしかして』
『何か心当たりが?』
『ウィル、この最初の十人、どこにどう埋葬されたか記録をたどれる?』
『やってみます』
役所のデータのハッキングになるのかしら?気軽に「やってみます」と言っているウィルはすごい。それを作った私はもっとすご……くないよね?
『こちらになります』
『探せるんだねえ……』
『少々面倒でしたが、こちらの痕跡は一切残しておりません』
色々ヤバいデータだった件。だけどモニカは何のことだかさっぱりという顔をしている。
『バレてないならいいわ。えっと……あった。海上散骨』
『なんだそれは?』
モニカに日本での一般的な埋葬の流れ――火葬して遺骨を骨壺に納めてそれぞれの墓に納骨――を説明する。
『遺骨が墓に入っているのなら、寺にダンジョンができるのは当然として、海を越えたのは?』
『それがね……手続きを踏めば、海に遺骨をまけるのよ』
『ほう』
『そして……ウィル、世界地図に北太平洋の海流を重ねて』
『はい』
地図上の太平洋にぐるりと時計回りの矢印が描かれた。日本の沿岸から太平洋北部を進み、アメリカ西海岸、そしてハワイへ。
『これが海水の大きな流れ。これに乗っかったら……アメリカ西海岸を経て、南の島にも届くわ』
『なるほど』
そして一度ダンジョンが広がってしまったら、そこから生み出されるモンスターによる死亡事故が新たなダンジョンを生み出すだろう。その被害者も地元の住民だけならともかく、旅行者などが被害に遭ったら、母国へ送り返されるだろう。そうやって世界中へダンジョンが広がっていったのだ。
『そして、そのまま太平洋沿岸を中心に広まったと。骨のひとかけらでもダンジョンってできるの?』
『そこまではさすがにわからん。わざわざ観察していた者もいないからな』
『それもそうか。でも、その後世界中に広まるまでに五十年くらい?全くとんでもない事態を引き起こしていたわけね』
『これが……さらに過去の勇者召喚でも起きていたとなると』
『モニカ、それは考えないことにしよう』
私たちの前にも勇者召喚は何度も行われており、召喚された者の死も記録されている。ただ、地球から召喚されたわけではないらしい。つまり、この地球ではないどこかの世界にもダンジョンをばらまいていたということか。結構シャレにならないレベルの迷惑をいくつもの異世界に振りまいていたのだ。
『戻れたら、二度と勇者召喚してはならないと伝えたいが、ままならんな』
『うん』
モニカが落ち込んでしまったのをなだめながら、ある一つの、とても怖いことを予想してしまう。
『ウィル……第三次世界大戦が始まった経緯を教えて』
『はい……一般的なニュース記事をまとめた内容がこちらになります』




