20時(2)
『えーと、じゃ、これを選んで……読むわね』
記事の概要はこんな感じだった。
2026年5月19日午前10時半頃、県立西和高校一年二組の生徒三十六名と英語教師一名が授業中、突如として姿を消した。パンッと何かが弾けるような音と光があったという。異常を感じた隣の教師が様子を見に行ったところ、ロッカーや机の脇にかけられていた荷物はもちろん、机の上に広げられていたノートや筆記具もそのままにして、全員の姿が消えていた。すぐに警察による捜査が行われたが、窓の外へ飛び降りたのなら体育の授業中だったクラスから丸見えだし、廊下を歩いて行ったのなら両隣のクラスには気付かれるはず。なのに、誰にも気付かれず、四十名弱の人間がいきなり消えており、行方はつかめていない。
『ってことが書かれてるわ』
『なるほど』
そして別の記事には行方不明者の全員の名前。転移した時期が五月半ばだったので全員の顔と名前は微妙に一致していなかったけれど、その後も続いた命がけの日々を乗り越えるために、毎晩語り合ったおかげで全員の名前はしっかりと魂に刻まれている……なんて、格好の良いものはない。疲れ切って寝てばっかの日々だったわ。
「空間収納……っと」
取り出したのは何人かの生徒手帳。血にまみれているものも多く、張り付いていて開かないものもあるし、そもそも全員分ですらない。次々クラスメイトが死んでいく中、生き残った者が受け継いでいこうと誓い、引き継いできた品。それらをどうにか開いていき、名簿と照らし合わせていく。
『はあ……改めて現実を突きつけられたわ』
と言っても、今更の話なのよね。薄情に聞こえるかも知れないけど、「遺体は正視に耐えない状態ですので」と言われるほどだったらしくて見せてもらえなかったから実感があまりなかったのと、訓練に次ぐ訓練という日々に忙殺されていたから、気が紛れていたともいうかな。
『実里、大丈夫か?』
『うん。ちょっとね……』
『無理はせずに今日はこのくらいで切り上げてもいいんだぞ』
『大丈夫よ』
『そうか……だが、一応念を押しておく。次の情報は多分、もっと重くなるかも知れん。無理はするなよ?』
『いいわ』
『では……その……えーと、その記事にある日付からだいたい千日後……誤差は百日程度見込んでいい。その学校?に関連した情報はあるか?』
『検索します……見つかりました』
『その中で比較的マイルドなものはあるか?』
『こちらになります』
表示された記事の日付は2029年2月6日。
内容は、教室にいきなり死体が現れたというものだった。
『え……』
『やはり、か』
当然学校は大パニック。すぐに警察に通報され、身元確認などがされた結果、2026年5月19日に行方不明になった生徒の内十名だったと判明。
『さらに……』
『こちらです』
何が何やらという事件からさらに約一年後の4月19日、三人分の死体が現れた。
教室は十人の死体が現れた時点で閉鎖されていたため無人で、施錠もされていたので完全な密室。申し訳程度についていた廊下の防犯カメラには窓越しに教室内を見て悲鳴を上げる生徒の姿くらいしか映っておらず、前回同様に何が何だかわからない状態。
そしてその後も間隔をあけながら死体が現れていったらしいけど、私はそれ以上記事を読めなかった。
『どういう……こと……』
『実里、これは……その、隠していたことなんだが』
『隠していた?何を?王国は何を隠していたの?!』




