20時(1)
『どう、かな?』
『解析完了。通信が可能となりました』
よし。あとはサイバーデッキに糸井からもらったIDカードを差し込む。私たちのIDだといろいろ身バレが怖いから。
『通信開始……接続しました。映像を周囲に投影しますか?』
『ええ、お願い』
ウィルの表面が鈍く光ると、昔見たアニメのネットワークの中を模した映像のようなものが展開された。
『実里、これは?』
『多分コレが、ネット接続がどうのって言ってた奴ね?』
『はい。サイバーネットと呼ばれるネットワーク環境です』
『さいばあねっと?』
さすがに異世界語にサイバーネットという単語はないので発音そのままになり、モニカの頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。
『そういう名前だから訳しようがないの』
『とりあえず、そんなものだと理解すればいいのだな』
『うん』
『そして、これを使えば色々な情報が入手できるという話だったっけ?』
『ええと……ウィル、情報検索はできるかしら?』
『はい。何について調べましょうか?』
『んーと……じゃあ、横浜リージョンの地図を』
『はい。こちらが一般に公開されている横浜リージョンの地図になります』
何度も見たことのある神奈川県の東側、横浜駅のあたりを中心にした地図が表示されるが、もちろん実里の記憶にあるモノとはまるで違う。だいたい中央が真っ白に塗りつぶされている時点で地図としてはイマイチだろう。そしてその白く塗りつぶされた外側にごちゃごちゃと書き込まれており、一箇所で赤い点が点滅している。そしてぐるりと線で囲まれた外側は緑色で塗りつぶされたところが多い。
『このぐるりと囲んでいるのがあの壁ね』
『はい。我々がいるのがこの赤い点になります』
『えーと、そうするとこの壁からここの壁の間がセクター3って呼ばれるところ?』
『はい。その内側がセクター2となりますが、それ以上内側は公開されておりません』
『なるほど。で、セクター3の外側、つまり横浜リージョンの外側は森みたいになっちゃってるから緑色』
『その通りです』
セクター2って何があるのかしらと思うけど、どうせろくなことにはならないから触れないでおいた方がいいかな。そんなことを考えていたらモニカがガシッと両肩を掴んできた。
『実里!』
『は、はい?』
『これは……とんでもない技術ではないか?!こんなに詳細な地図が簡単に見られるのが普通なのか?!』
『そう……だけど?』
『どういう仕組みなのだ?』
転移する前、つまり百年前にもこのくらいのことはできていた。それも手のひらサイズで……と思ったけど、異世界にはない技術よね。
『まあ……その……うん、どういう仕組みかってのはちょっと難しいと思うわ』
『そうか……私には教えられない機密事項ということか』
『うーん、私も仕組みを聞かれても……ほら、私がいた頃から百年経ってるし』
『そうだったな』
『さてと、地図の仕組みは……知りたかったらあとでウィルに聞いて。とにかく色々調べられるってことはわかったかしら?』
『ああ!早速だが、調べて欲しいことがあるぞ、ウィル!』
『何なりとどうぞ』
『えーと、百年前、実里のいた高校と言ったか?私たちがここに来た扉のあった、あの学び舎で起きた行方不明事件についてだ』
『畏まりました……一般的なニュース記事がこちらです』
ずらっと色々な新聞社の記事が並び、モニカが食い入るように見つめ……すぐにくるっとこちらを見た。しょんぼりした顔で。
『読めない』
『ですよねー』
そりゃ見つかるのは日本語の記事だよね。




