13時
「お早いお帰りですね」
「それ、嫌味?」
「ハンターなりたて初日、だいたい四割がモンスターと戦えずに失意の中で戻ってきますから。まあ、その背中のドラム缶を見る限り、いい感じに、というのはわかりますが」
「なら私は六割の方ね」
「六割はここの敷居をまたぎません、二度と」
「へ?」
「だいたい一年以内にモンスターの胃袋から半分溶けたようなIDが見つかるか、行方不明者リストに永遠に載るかのどちらかですね。幸い初日は乗り切ったようで、おめでとうございます」
協会に入ったところですぐに小出さんがやって来て、辛辣なことを言う。ひどい、私たちってそんなに弱そうに……見える……のかな?
「なら私たちは例外中の例外よ」
「あー、ちょっといいか?」
「なんでしょうか?」
不毛な言い合いになりそうなのを見かねた田中さんが割り込んできた。
「裏の解体場に行こう」
「へ?」
受付の小出さんがポカンとしてしまったのを余所に、田中さんが「こっち」と言うのについていく。そして私の歩くあとに漂う……異臭……はしない。私が魔法で押さえ込んでいるからね。
「こんな感じですね。全部で二十四匹です」
「に……じゅう……よ……ん」
「何かおかしいですか?」
「そんな馬鹿な……うぷっ!」
数え直そうとした小出さんは、腐臭を通り越して有毒ガスとしかいいようのない臭いに回れ右。えずきながら隅の方へ。
ちなみに私とモニカは顔の周囲に空間魔法で見えない壁を造り、新鮮な空気が届くようにしているので平気な顔。一方の田中さんたちはなんとか堪えながら……あっ、海野さんと鈴木さんが逃げた。
ゴブリンは基本的に一匹五百円。モンスターの買い取り価格はその状態によって変動するけれど、ゴブリンはあまり変動しないとのことで、一万二千円……かと思ったら魔石が五個見つかったので、五千円上乗せの一万七千円となりました。
「ではIDを」
「へ?」
「入金しますので」
「ああ、はい」
「お二人に均等に分けておけばいいですか?」
「そうですね、お願いします」
『実里、実里』
『何?』
『いくらもらえたんだ?』
『ええと、昨日の夕食のアレで言うと』
『アレはもう食わないからな!』
そんな私たちのやりとりをよそに、小出さんはIDを受け取るとカウンターの向こうでカチャカチャとやって返してくれた。うん、さっき渡したIDと別のになってるね。
「……」
「どうしました?」
「いいえ」
特に深く突っ込まなかったけど、支部長の青山さんは私たちが入会申込書を書いている最中にIDを用意していたことになるはず。私たちのフルネームすら知らずに。つまり私たちが渡されていたのは仮のID、もしくは死んだハンターのIDだったのだろうね。そして、これが正真正銘、正式な私たちのIDになるのね。
「じゃ、俺たちはこれで」
「元気でね」
「困ったことがあったら何でも相談して……と言いたいけど、あなたたちなら大丈夫そうね」
田中さんたちとはここでお別れ。そして私たちもここに長居しても意味はないので、小出さんに今の手持ちで泊まれる、程良いレベルの宿を教えてもらって協会をあとにする。




