16時
「モニカの反応が見えるようになりました」
「ということは……やはり、ダンジョンか?」
「可能性は非常に高いかと」
騎士の報告にミルコは少しだけ違和感を覚えた。
「確か、勇者の元の世界にはダンジョンも魔物もいなかったはずだが」
「ええ。我々もその話は聞いていますが」
「嘘だった可能性は?」
「彼らが嘘をつく理由はなんだ?」
「ありませんな」
騎士の身も蓋もない意見に、ミルコは溜め息をつく。もしも、ダンジョンも魔物もいる世界から来たのなら、それを隠していたのはなぜだ?しかも全員。大人も一人いたが、ダンジョンなんて「げえむ」とか「あにめ」にしかないと言っていたか?もしかして彼らの語っていた「げえむ」「あにめ」という言葉は、この呪われたような地のことを指す名前なのか?だがあの話し方は、どこかの地域や施設を指している様子はなかった。それに全員が全員、同じようなことを言っていた。隠したり嘘を言ったりしているとしても、あのように何十人もいたら何人かはつい本当のことを話すはずだ。そんな様子がなかったのだが……不可解極まるな。神の理から外れた何かが起きているのだろうか。
「とりあえず方角はあちらか……」
「殿下、既に日がかなり傾いております。これ以上は」
「もうそんな時間になるのか」
「これ以上は危険かと」
「わかっている。ここで野営にするぞ。方角は押さえておけ」
「はっ!」
過剰に警戒しているせいで全然距離が稼げてない一行はまだ駅ビルが見える場所にさえ到達していなかった。
一方、そんな彼らに気づいている者ももちろんいた。鳥坂たちである。
「兄貴、どうします?」
「どうって……どこからどう見ても完全武装してるだろうが」
「そうッスね」
「でも、着てるもんは結構いいもの着てるみたいですぜ?」
「金も持ってそうだし」
「うーん……」
ヒャッハーたちのまとめ役でもある鳥坂は大して中身の詰まっていない頭の乗った首をひねる。
「なあ、お前ら……あいつらの話してる言葉、わかるか?」
「全然」
「兄貴、俺らに英語がわかると思ってるのか?」
「オー、ワタシ、ニホンゴワカリマセーン!」
「「「ぎゃはははは」」」
「しっ!お前ら静かにしろ!」
「サーセン」
幸い距離があったせいか、こちらの声はあちらには聞こえていないようで、鳥坂はホッとする。
昨日のアレで学んだことが一つある。
ヤバい相手には手を出すな、だ。
そしてもう一つ、これは経験なのだが、ヤバい相手を見分けられるようになっていた。なんとなくゾワリとする感覚のある相手がヤバい、と。そしてあの連中はソレだ。
一人一人は昨日のあの二人に遠く及ばないが、それでもここにいる誰よりも強いのばかり。せいぜい真ん中に囲まれている偉そうにしてる奴が弱っちいか、という程度だ。
「お前ら、行くぞ」
「え?いいんですかい?」
「ああ。アレは手を出しちゃヤバい。昨日の連中、覚えてるだろ?」
「ひっ!」
「ああああ……あれは……あれあれれれれ……」
「こわいこわいこわいこわい……」
むさ苦しい男たちがガタガタ震えている姿は、正直気味悪いのだが、鳥坂はなんとか耐えた。
「アレよりは弱いが、弱い分だけ手加減なしでやってくる気がする。しばらくこっちは近づかないでおこう」
そう言い終えるよりも早く、全員が逃げ出していた。
「ちょ!待てよお前ら!」




