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  作者: ひじきとコロッケ
2126年4月19日
26/67

10時(1)

「接続開始……」


 支部長の青山の元に、所用を済ませた村山が戻ってきてサイバーデッキに接続すると、目の前にホログラム的に色々な情報が表示され始める。実際の空間には何も表示されておらず、BCポートを通じて脳にイメージを送っているだけで、手で触れたり意識を向けるだけで操作できる優れもの。二十世紀頃に書かれたSF作品で夢想された定番技術も、今や生活の一部だ。当たり前のようにBCポートを介して情報を処理してきた彼らにとって、それは感慨を抱くようなものではない。もし百年前の人間が見れば、腰を抜かさんばかりの光景だろうが。


「戸籍検索へ……まずは、モニカ・トリエステ……該当無しか」

「あの見た目、どう見ても日本人じゃありませんからね」


 自身の権限で接続できる戸籍データベースでモニカを検索したが、該当無し。通常のネット検索も同時進行で検索させたが、ヒットしたのは類似項目としてイタリアの地名が見つかった程度。地名が服を着て歩くわけがないから、対象から外していいだろう。

 一応、日本への入国履歴もチェックしたが、比較的強い権限を持つ青山も見つけられなかった。もっとも、このご時世、入国履歴がどこまで正確かなんてわかったものではない。いや、そもそも島国の日本の場合、外国との行き来は非常に難しいのだ。


「続いて……十倉実里……んん?」

「どうしました?」

「村山、これを」


 戸籍のデータベースに該当が一件有りと表示された。


「概要確認……できたか。えーと……は?」

「2010年9月生まれ?」


 青山の「ハンター協会支部長」という権限では名前と生年月日程度しかわからないとしても、絶句するしかなかった。それほどまでに、表示されたデータは現実離れしていたのだ。今朝、実際に顔を合わせた十倉実里は十五前後。見た目で年齢を推し量るのが苦手な青山だが、あの姿で百歳を超えていることはないと断言できるし、立ち居振る舞い、話し方から言って、成人していないのも確かだろう。となると、戸籍データベースに何らかの不備があるか、特記事項があるのかといったところだが、青山の権限ではそれ以上の確認ができない。


「通常のネット検索は……」

「該当がありますね」


 百年以上も前からネットで蓄積され、世界大戦も生き延びた情報の掃き溜め。その中からいくつかの記事がヒットした。


「2026年5月19日……県立西和高校一年二組の生徒と英語教師が行方不明?」


 当然だが二人とも生まれる前の日付だ。


「授業中に生徒と教師合わせて三十七名が突然姿を消した。鞄などの荷物はそのまま残されていた。他の教室の生徒や教師は特に不審な物音を聞いたわけでもなく、廊下を歩いて行った様子も無し。グラウンドで体育の授業をしていた連中にも気付かれることなく……だと?」

「へえ、こんな事件があったのか」


 二人が生まれるより遙か昔の小さな、彼らが知るはずもない遥か昔の怪事件。一見無関係に思えるが、行方不明者リストの一ヶ所が青山の目を釘付けにした。


「行方不明になった生徒の一覧だな。十倉実里……年齢的には戸籍データベースと合致するか」


 せめて写真でもあればと他の情報を探してみたが見当たらず。そりゃそうだ、個人情報だのコンプライアンスだのが厳しい時代だったはずで、行方不明の生徒と教師の名前が公開されているだけでも、ありがたいと思うより他ないだろう。

 これが、もっとありふれた名前だったらともかく、十倉という姓自体かなり珍しいから、同姓同名の別人だというにはちょっと無理がある……


「村上」

「はい」

「少し、面倒な仕事をする。緊急以外では呼ぶな」

「わかりました」


 少し面倒な手続きをするため、青山はネットのさらに奥へ進んでいった。ここから先、村上の権限では進もうとするとすぐに警報が鳴ってしまうので任せることにした。

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