9時(3)
「違った性質?」
「うん。詳しくはわかっていないんだが、ダンジョン内ではモンスターが自然発生するらしい。んで、食事の必要もないらしいんだが、ダンジョンの外に出ると食事が必要になる。つまり、人間を襲う理由ができるんだ」
「ってことは人間を食料と見なして襲ってくる?」
「正解。だからダンジョンにいるモンスターはただ闇雲に人間を襲うだけだけど、外に出たモンスターは……食うために襲うようになる。つまり、頭を使うようになる。だから隠れて背後から急所を狙うようになったりするし、複数が連携して戦うようになったりもする」
「偉いさんの間では「野生化」と呼んでるらしいよ」
「あとはそうだな。ハンターにとってはちょっとおいしい」
「おいしい?」
「野生化したモンスターは、必ず魔石を持っているからな。いい稼ぎになるんだ」
田中さんの説明に望月さんと佐藤さんが補足した。野生化か……モニカなら何か知ってるかな?
『……ってことなんだけど』
『ふむ……ちょっと興味深いな』
『詳しい話はまた落ち着いたところでしましょうか』
『ええ』
モニカにも話を伝えながら、もう一つの疑問を投げかける。
「茂みの向こうにいたオークに気付いたのって……それも距離とか正確に」
「これ、これだよ」
そう言って田中さんが見せてくれたのは首の後ろのBCポートと、そこに繋がっているサイバーデッキ。
「街の周囲には結構な数の監視カメラが設置されてるんだ。そいつらがモンスターを捉えると、近くにいるハンターのデッキにアラートを飛ばすって仕組みさ」
「へえ」
「と言っても、近くにいる場合限定だけどね」
「逃げるか戦うか選べってことですか?」
「そう。不意討ちさえ食らわなければ、って感じだな」
「一応、ハンター協会にも同じ情報が送られるから、街に近づきすぎてきたら警報が発令されるようになってるわ」
「で、すぐに近くのハンターに出動要請が出る」
「ふーん」
気配察知とかできるのかと思いきや、監視カメラ……システムによる索敵だったのか。
「二人ともBCポートはつけてないんだ?」
「え?ええ」
「便利だぞ。近距離通信使えば、百メートルくらいの範囲内で声を出さずにやりとりできるし」
「お金を稼いだら考えます」
「うんうん」
そんな感じで歩き続けること一時間弱。開けた場所に出た。
土地勘のない状態での進軍は慎重そのものだったため、昨夜は学校の敷地を出たところでミルコたちは移動をやめ、野営とした。今のところ、危険な生物などには遭遇していないが、この世界のことをほとんど知らないため、用心に越したことはないと、ミルコと騎士隊の隊長の意見が一致した結果である。
そして一夜明け、移動の準備を騎士たちが進めているなか、ミルコが周囲を見ながら首をひねっている。
「フム……これは一体?」
「殿下、どうされました?」
「不思議に思わないか?」
「不思議?」
「そうだ。あんな頑丈そうな建物を建築する技術があり、道もこのように謎の物質で舗装していたようだが、それがこんな森に覆われているのはなぜだ?」
「そう言われましても」
「考えてみよ、こういった場所、何か連想しないか?」
「廃墟……遺跡ですか」
騎士の答えにミルコが頷く。
「何があったかは知らんが、この辺り一帯は元々はそれなりに栄えた街だったはず」
「なるほど」
「これはもしかすると」
「何かお気づきで?」
「まだ推測の域を出ん。とにかく移動だ。それでモニカは?」
「ハッ、探知の魔道具は正常に動作しております!」
そう言って騎士は魔道具を操作している者と共に「こちらです」と先導して歩き出した。




