6時
夜明を過ぎてもまだ薄暗いセクター3の、床が少し傾いた宿で目を覚まし、携行食で軽く朝食を済ませると仕度をしてさっさと部屋を出る。廊下になぜか転がっている男共が邪魔なので蹴り飛ばしながら宿を出ると、人目を避けながらスラムのような路地を抜けて壁のそばまで向かい、少々細工を施す。
そして昨日見つけたハンター協会の周りの見えるところで様子を窺っていると、しばらくして五人の男女がハンター協会の建物に向かうのが見えた。
『よし、行くわよ』
『うまく行くといいな』
近づいていくと五人の会話が聞こえてきた。「昨日の」とか「今日はもっと」とか。多分、あのハンター協会で受ける依頼をどうするかなんて話をしているんだろうと思う。
「あ、あのっ!」
「え?」
「俺たち?」
「はいっ……あの、お願いがあるんです!」
今の私たちの格好は、裾がボロボロで穴も開いている上に汚れまくった服。手足や顔、髪までも泥まみれ。どこからどう見ても浮浪者にしか見えないひどい格好だ。
「えっと、何かな?」
五人のリーダーっぽい男性が相手をしてくれそうなので、まずは第一段階クリア。
「ここって……えっと、お仕事したら「おかね」ってものがもらえて、ご飯が食べられるようになる場所ですよね?」
「えっと……うん、そう……だけど」
「あの、ここで働きたいんですけど、どうしたらいいですか?」
五人は顔を見合わせ、困ったような、それでいて放っておけないという表情で頷き合った。
「おいで、話を通してやろう」
「な、なるほど……それは……」
「なんとかなりませんか?」
「うーん」
五人が協会の受付のお姉さん――胸元の名札には「小出」と書かれていた――に「この子たち、登録したいって言ってるんだけど、よろしく」と案内してくれたので、第二段階はクリア。五人は笑顔で「頑張れよ」と出て行った。ありがとう!
そして、予想通りお姉さんに言われたのが、
「ではIDをお願いします」
「IDって何ですか?」
「は?どういうことですか?」
そして、身の上話を披露した。昨日鳥坂たちに話したのをもう少し詰めた内容。
山奥の、本当に辺鄙な、電気も通っていないようなところで私とモニカをはじめとした百人程度が自給自足の生活をしていた。しかし、私たちが生まれた頃から、一人また一人と老衰で亡くなっていき、さらに追い打ちをかけるようによくわからない病気が蔓延し、残されたのは私たち二人だけ。生活が立ちゆかなくなったので、着の身着のまま山を下りてきてこの街に辿り着いた。だけど、二人が大人たちから教わっていたのとは全く違う風景が広がっていて、どうしたらいいかわからず右往左往していたところ、ここでお金を稼げるらしいと聞いたので、と。
「ここ、壁で囲まれてますけど?」
「地面に穴の開いているところがあって、思い切って入ったら壁の内側に入れたんです」
「うわ……」
面倒くさい事案がやって来たという顔をされてしまったけど、念のために壁を越えられる穴を開けておきました。そう、私たちが泥まみれなのは、その穴がずっと昔からあるようにカモフラージュする作業をしていたから。演出に妥協は不要と、泥も落とさないどころか、敢えてつけたくらい。
「少しお待ちください」
そう言って奥に引っ込んだお姉さんが次に連れてきたのは、ここで一番偉い人でした。




