21時(3)
今回錬成した人工精霊は、かなり高度な情報処理ができることを目指した。通常の人工精霊はぼんやり光ってフワフワ漂って……ちょっと魔法っぽいことをする程度がせいぜい。でも、こいつはキチンと自我を持ち、私たちとコミュニケーションを取れるようにしている。そのために、
『丸二日間、安定するまでの間は何もできないの』
『なんと』
『こればっかりは待つしかないのよね。ってことで……占有空間』
『初めて見る魔法だな。収納に似てるようだが?』
『うん。空間収納と違って、時間経過があるのよ。食べ物を保存するのには向かないし、容量も小さいから使わなかったの』
『なるほど』
『さて、これはこれでおしまい。このまま放置しておくとして、今できることくらいはしましょうか』
『私にできることはあるか?ないよな?』
『……』
『なんで目をそらす?!』
『だって、モニカ、日本語読めないし』
『頑張る……ぞ!』
ま、その頑張りは明日以降でいい。今は明日の食費をどう稼ぐかを考えなければならないので、二人の前に投影結界を構築する。単に私が「あ、コレ覚えておこう」と思った映像を見返せる……要するにカメラだ。
『えーと、あった。コレ』
『ん?コレは確かに見覚えがあるな』
『看板に「ハンター協会」って書いてあるの』
『ハンター協会……?』
『出入りしている人も記録しておいたけど、よく見て』
『つまり……冒険者ギルド?!』
そう、明らかに武装、それもアウトローとか兵士みたいなのではなく、キチンと整備した装備を身につけ、背中に色々と荷物を入れているだろうバッグを背負い、数名がひと組で出入りしていたので、気になって記録しておいたのだ。
『うーむ』
『私はほら、勇者扱いだったから冒険者ギルドって行ったことなかったんだけど、何度か通りがかりに見た感じだと、こんな感じだったような……』
『そうだね。確かに』
『ゴブリンの肉なんてふざけたものが出てきた理由はともかく、ゴブリンがいるならば他にもモンスターがいる可能性……いえ、実際いるんだろうと思う。そしてそれを討伐している人もいる』
『この世界……日本とやらが単なる戦争程度でゴブリンが出るわけがない。実里のいた頃から激変した理由がわかるかも、ってことか』
『その通り』
そんなわけで、明日はこのハンター協会に行ってみようと思う。多分、弱火でじっくりのステーキ定食を頼まなくても入れるはずだからね。もちろん、行っただけで情報が入るとは思えないけど、もう少しあの糸井とか鳥頭……じゃない、鳥坂よりはマシな情報を得たい。つまり、
「世間知らずの二人だが、実力は確かみたいだな」
「それほどでも……あるな。将来が楽しみだ」
「フン、詳しい話をしてやろうじゃないか」
くらいの展開をしないとダメかもね、という考えをモニカに伝えた。
『その場合、えーとなんだっけ』
『ID』
『そう、それ。そのハンター協会に実力を示すのは問題はないどころか、見せつけた方がいいと思うが、IDとやらがない私たちがまともに……その、ハンターとやらに登録できるとは思えない』
『そうね』
『あの糸井って男の話だと、私たちに渡されたIDは、おそらくどこかで行き倒れた者からあの連中が集めたものだろう?だから使い続けるのはちょっとマズいと思う。キチンと正式なものを入手する方法を考えた方がいいのでは?』
『そうよね。じゃ、こんなのはどうかしら?』
ざっくりとした作戦を説明し、モニカと詳細を詰めていく。後は二人の演技力次第だけど……ま、なんとかなるでしょう。どうせダメ元だし。
『さて、明日は早いからもう寝ましょう』
『ええ、おやすみなさい』
『おやすみ』
色々なことが一度に起こりすぎたとベッドの形になっている結界の上にポンと飛び乗る。キチンと調整してふわふわの感触にしてあるので、寝心地はいい。さらに取り出しました、異世界から持ち帰った毛布はきれいで変な臭いもしないからグッスリ寝られそうだ。
なお、寝ている間に私の結界の反撃を受けて数名が軽傷を負ったらしい。相当なことをしない限り怪我するような反撃はしないはずなんだけどな。




