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  作者: ひじきとコロッケ
2126年4月18日
17/68

21時(2)

 異世界では錬金術の守備範囲はとても広かった。位置づけとしては、天文学とか数学とか物理学――と言っても物を上に投げたら落ちてくる、見れば分かる程度のことしか扱っていない――以外の科学は全部錬金術なのではないかというくらいに。

 そんな錬金術にはいくつかの擬似生命を作り出す技術がある。ゴーレム、ホムンクルス、人工精霊等々。このうち、ゴーレムは魔法の影響が大きいので、錬金術の専売特許ではないのだけれど、ホムンクルスと人工精霊は錬金術師の独壇場になっていた。研究する人、ほとんどいなかったけどね。作るのに必要な材料は貴重な物ばかりでとても簡単には揃えられないし、加工に必要な技術レベルも高く、失敗しやすい。オマケにホムンクルスは下手な自我が芽生えると暴走するし、人工精霊はうまくいってもすぐに消えてしまう。実に使い勝手が悪いというか、コスパが悪いというか。


『まずは、ここをきれいにしないとね……結界構築』


 シュンッと音がして部屋の形になるように光る壁が広がっていく。変な臭いもしなくなるし、外から時折聞こえてきていた酔っ払いの奇声も聞こえなくなった。オマケ機能として、部外者の侵入も防ぐ。もちろんある程度以上の力があれば結界を破るくらいはできるけど「ある程度」の基準が、城壁を軽く突き崩すようなドラゴンを素手で殴って吹っ飛ばすことができるレベルが要求される。この辺にそこまでの実力者はいないと思う。


『場所はこれで良し。材料は……コレでいいや』

『エ……エルダードラゴンの魔石?!』

『コレをベースにして……この辺の材料を』


 どんどん並べられていく各種素材にモニカがドン引きしている。


『冗談だろ?買い取り金額だけでサルヴァートの国家予算十年分を軽く飛び越すような物ばっかりじゃないか!』

『あちこち行ったからねえ』


 魔物討伐と名付けられた訓練が日々行われた結果がこれ。討伐で手に入れた素材を処分するまもなく次の討伐だったから、空間収納の中はレア素材だらけなのよ。


『ゴメン、モニカ。ちょっと血を一滴ここに』

『へ?』

『私も入れるけど、人工精霊に私たちを主人と見なすように登録しておかないと』

『わかった』


 ナイフでちょっと切って、小瓶の中に血を一滴。続いて私も――普通の刃物じゃダメなので、伝説の剣、みたいなのを選んで――一滴。それからとっておき(・・・・・)の素材も入れておく。


『コレで人工精霊の材料はよし』

『しかし、人工精霊はすぐに蒸発してしまうと聞いたことがあるが?』

『それを何とかするのよ』


 そう、人工精霊はイメージ的にはキラキラと光る小さな粒の集合体。その集合体全体で一つの精霊という形態だ。しかし、この粒は常に拡散しようとする性質を持っている上、表面から熱が逃げるように霧散して消えてしまうので半日もすれば精霊は形を保てずに蒸発して消えてしまう。そのため、だいたいの場合、球状にまとめる。すると球の中心部分は密度が高くて安定する。では球の表面は……外側は密度ゼロなので表面からどんどん蒸発してしまうのだ。

 そこで取り出したのが、各種魔法金属素材。ミスリルとかオリハルコンとか。それらを私独自の比率(レシピ)で用意し、錬金術で混ぜ合わせて中が空洞の球を作り半分に割る。そして中に人工精霊の材料を入れて密閉し、中の空気を錬金術で抜き取ってエーテルという謎物質を代わりに入れる。そしたら球の表面に魔法陣を刻む。球体そのものの強度維持に、重力制御、エネルギー循環諸々。で、そこに通信ポートをつける。材料は適当な金属を加工し、サイバーデッキのコネクタに合うようにするだけ。そして、糸井からもらった通信用サイバーデッキを接続。さらに外側に操作用のフタをつけた外殻を作って完成。ちなみに強度だけなら怒り狂ったドラゴンが咬み砕こうとしても傷一つつかないくらいにしておいた。物理的な防御はこれで充分。あとは、フタも私かモニカでないと開けられないようにロックしておく。


『器が完成っと』

『コレの中に人工精霊を作るのか。ちょっとワクワクしてきた』

『ふふ、私も。では人工精霊を錬成!』


 床に広げた魔法陣に私の魔力を注ぎ込むと、中に詰め込んだ材料が反応して人工精霊を形成、同時に器に仕込んだ魔法陣が発動し、それぞれの効果を発揮しながら全体の形が仕上がっていく。


『完成、と』

『さすが実里。では早速色々と情報収集を』

『したいんだけど、まだ無理』

『え?』

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