21時(1)
『ひどい目に遭ったわ』
『ゴブリンを食べるなんて、考えたこともなかったんだが、こっちでは普通のことなのか?』
食に貪欲な日本人といえど、ゴブリンは早々食べないと思うんだよね。
『そもそもの前提がおかしいのよ。少なくとも私が転移する前、ゴブリンなんていなかったわよ?』
『え?ゴブリンという名前に違和感を覚えていなかったようだったのは気のせいか?』
『えーと、ファンタジー、作り話の世界ではメジャーなのよ』
『なるほど……つまり、ゴブリンを食べる食べない以前の問題があると』
『うん。これは……情報収集をしないと何が出てくるか怖くてどこにも行けないわね』
『情報収集というのは、例の「びしーぽ」とか呼んでいたアレか?』
『うん』
ここまで来る間、それとなく行き交う人を見たところ、ほとんどの人が首の後ろに細い線を繋いでいた。
『では早速、私が受けてもいいので』
『待って。無理よ』
『無理?なぜだ?』
ついでにBCポート、あれの手術をしているらしい看板もあちこちにあった。中には「BCポート手術即日完了!特価!一万円」なんて格安なのも。一応、一万円の入ったIDが一枚だけあるから受けられる。
だけど、今のところ受ける気はない。
そもそもモニカは受けたところで何の役にも立たない。日本語による会話はもちろん文字も読めないのだから、「じゃあ、○○について調べて」ということができない。英語をはじめとした外国語もあちらで一般的だった東部語とは似ても似つかない言語。モニカはまずは日本語の勉強からだ。
では私は?不可能です、はい。異世界で無理な戦闘とそれに伴う負傷、治療という名の改造を繰り返した結果、私は全身いたる所を自身の錬金術で改造してしまっている。BCポートなるものを取り付けるうなじあたりも改造済みで、メスを入れるどころかドラゴンの爪すら弾く強度がある。頑丈で強い力が発揮できる反面、医者にかかれない体になりました。
麻酔の注射針やメスはもちろん、生半可な刃物では傷一つもつけられないのよ。そもそも、私にとっての「生半可」の水準自体、狂ってると思う。ドラゴンが爪でひっかいてきても、爪の方にヒビが入るくらいだからね。まあ、医者にかかる必要性を感じない体とも言えるかな?それに、中身もだいぶ色々いじってしまったから、診察されたとしても……ね。心臓、いくつ入ってたっけ?ってレベルよ。
『ではどうする?いろんな人に聞いて回るのか?』
『まさか』
『では……』
『人工精霊かな』




