第31話 咲良エスケープ2
食後、片付けを終えたころ。
雪杜がふと咲良を見る。
「お風呂は入ったの?」
(はっ、そうだスマホと財布しか持ってきてない)
「シャワーでいいよ」
「そう?僕もそうしよっかな」
(着替えどうしよう……)
そんな咲良の思考を拾ったように、御珠がさらっと言う。
「妾のパンツ貸そうかの?」
「っちょ!せっかく黙ってたのに言わないでよ!」
雪杜が真っ赤になる。
「そ、そっか着替え……」
「うん……」
雪杜はしばらく悩んでから言う。
「コンビニに買いに行こっか」
「うん……」
咲良は小さく頷き、二人は玄関へ向かった。
扉を開けた途端、夜の冷気が足元から入り込む。
住宅街は静かで、街灯の下だけがぽつりと明るい。
二人の影が並んで伸びた。
「……ごめんね、急に」
「いいよ。びっくりしたけど」
「うん……」
靴音が続く。
「お母さんと喧嘩してさ」
「……うん」
「もう顔見たくなかったんだよね」
「……うん」
咲良は息を吐き、前を向いたまま言う。
「でも、ここ来たら」
「うん?」
「なんか、落ち着いた」
「……そっか」
(本当は、雪杜に会いたかったの)
言葉にしない本音が、咲良の横顔に残っていた。
コンビニの白い蛍光灯が、咲良の影をくっきり落とす。
下着コーナーの前で足が止まった。
(カップ付きのキャミでいっかな。あとパンツか。
でも……)
「……お金足りない」
雪杜が歩み寄る。
「僕が出すよ」
咲良は目を伏せる。
「……」
「いいって。遠慮しないで」
咲良は振り返り、そっと名を呼んだ。
「雪杜」
声が弱くなる。
「……今日だけ、甘えていい?」
「……うん」
咲良は胸の奥でそっと呟く。
(本当は毎日甘えたい……
いいな御珠ちゃん……)
コンビニの光の下で、その寂しさは誰にも届かないまま揺れていた。
―――
玄関を開けると、家の中のこもった熱が肌にまとわりついた。
外の蒸し暑さで汗ばんだ咲良が、喉の奥で息を整える。
廊下では御珠が待っていた。
「おかえりじゃ。ボイラーは点けてあるのじゃ」
「ありがとう御珠ちゃん」
「咲良が先に入るのじゃ」
「うん」
咲良はタオルを手に浴室へ向かう。
足取りが軽くなっていて、雪杜はそれだけで胸が緩んだ。
浴室の扉が閉まり、湯音が遠くに響く。
リビングに残ったのは雪杜と御珠の二人。
御珠が首をかしげる。
「……何を話したのじゃ」
「別に。歩いただけ」
「そうか」
御珠はわずかに口元を上げた。
詮索を飲み込み、見守る側に回る顔だった。
(それでよいのじゃ。咲良が笑っておる)
御珠の胸に小さな安堵が満ち、部屋のぬくもりが増した気がした。
突然、浴室の方から甲高い声が飛んでくる。
「ねーー!ねーってば!」
雪杜はびくっと肩を跳ねさせ、御珠と目を見合わせる。
「あれ?咲良、呼んでる?」
「なんじゃ?」
雪杜は脱衣所に入らないよう廊下で止まり、声を張った。
「どうしたのー?」
扉越しに、少し困った声が返る。
「私、何着ればいいー?」
「そうか。パジャマがない」
(パジャマ……御珠は神衣。貸せるのは僕のだけ)
雪杜はタンスへ向かいながら言う。
「えっと……僕のでいい?」
「雪杜の!?」
「サイズ合わないかもだけど」
「……いい!!」
即答。
その勢いに雪杜は目を瞬かせた。
(なんで即答なの)
横で御珠が静かに微笑む。
(咲良め)
雪杜はパジャマを抱え、脱衣所の前へそっと置いた。
「えっと、これ……
脱衣所の前に置いておくね」
「ありがとー!」
咲良の明るい声が返り、家の中がさらに和らいだ。
しばらくして、浴室の扉がカラリと開く音がする。
湯気が廊下へ流れ出し、咲良の影が脱衣所に移った。
雪杜のパジャマの布が、そこでかすかに揺れる。
タオルで髪を押さえながら、咲良はそのまま袖を通した。
(長い……袖、いっぱい余る……
でも……これが雪杜の……)
肩が少し落ち、袖口が指先に触れた。
もじもじと身を落ち着かせてから、咲良は意を決してリビングへ歩いてきた。
ドアをそっと開ける。
湯上がりの頬をほんのり赤くし、雪杜のパジャマを着た咲良が姿を現す。
袖も裾も余って、泳ぐように揺れていた。
「どう?」
雪杜は固まった。
「……」
御珠も静かに咲良を見る。
「……」
「似合う?」
(か、可愛い)
(彼氏パジャマの破壊力!)
「に……似合ってるよ」
御珠は半眼になり、ため息まじりに思う。
(雪杜め。デレデレしおって)
咲良はくすっと笑い、袖を指でつまむ。
「ねぇ、御珠ちゃん」
「なんじゃ」
「雪杜のパジャマ、ふわふわしてる」
「ほう」
「雪杜ってこんな匂いなんだ」
「っ……」
雪杜がピクリと反応する。
御珠は当然のようにさらりと言った。
「うむ。妾もよく知っておる」
「なんで!?」
咲良と御珠が同時に笑う。
「ふふ」
「ふふ」
そして咲良は首元をもぞもぞさせ、眉をしかめる。
「……でもやっぱ暑い」
ガバッ、と上を脱ぎ、キャミソール姿になる。
肩が露わになり、鎖骨がくっきりと浮かぶ。
細い紐が肩にかかっているだけで、生地は薄く、身体のラインがはっきり見える。
「っ……!」
雪杜が耳まで真っ赤になる。
「家ではいつもこの恰好で寝るんだよね。
暑いし、仕方ないよね」
(肩……出てる……)
(鎖骨……見えてる……)
(やばい……)
御珠は静かにその様子を見守った。
(咲良め……分かってやっておるの)
「何?雪杜、顔赤いよ?」
「べ、別に……」
「ふふ」
(やった)
(雪杜、ちゃんと見てる)
御珠は眉をわずかに寄せて言う。
「咲良、あまり雪杜を刺激するでない」
「えー、御珠ちゃんが守ってくれるから大丈夫だよね」
御珠はふいに目を伏せ、声を落とす。
「……妾も刺激したくなるのじゃ……」
「え」
雪杜の頭の中が一瞬で混線する。
(二人して……)
(今夜、眠れるかな……)
咲良は口元に指を当て、御珠は小さく肩をそびやかす。
夜の静けさとは裏腹に、三人の間だけが熱を帯びていった。
―――
三人ともシャワーを終え、湯気をまとったままリビングへ戻ってきた。
濡れた髪の水滴が、肩や襟元でそれぞれ違う光り方をしている。
雪杜が冷蔵庫を開け、牛乳を取り出す。
「風呂上りは牛乳だよねー」
「妾も飲むのじゃ」
「じゃ私もー」
三人でコップを持ち、同時にゴクゴクと喉を鳴らした。
湯上がりの火照りに、冷えた牛乳が喉から腹へ落ちていく。
飲み終わった瞬間、咲良が「ぷはー」と息を吐き、
御珠も満足そうに目を細めた。
小さな“風呂上がりの幸せ”が、部屋に広がる。
ソファに三人並んで座ると、自然と距離が縮まった。
雪杜がテレビにYouTubeを映し、動画が次々流れ始める。
「あはは!何これ!面白ーい!」
咲良の笑い声が弾む。
「こやつは馬鹿なのじゃ」
御珠は眉をひそめつつも、口元が強ばるほどではない。
「ミニPC買ってよかった」
雪杜はリモコンを握りながら、二人の反応に頷いた。
画面の光が三人の顔に色を落とし、深夜の眠気がゆっくり混じっていく。
動画を見ながら、咲良のまぶたがだんだん落ち始める。
ゆらりと肩が揺れた。
「ん……」
「そろそろ寝よっか」
「そうじゃな」
三人の目が寝室の方へ向く。
しかし、いつもの夜とは違う。
「誰がどこで寝るのか」が目の前に転がっていた。
(いつもは御珠とダブルベッドだけど
今日は咲良がいるしな)
雪杜が口を開く。
「えーっと、僕、ここに布団敷いて寝るね」
(ふむ。それが一番自然かの)
御珠はうなずいたあと、やわらかい声で言う。
「咲良は妾とダブルベッドじゃ。ふかふかじゃぞ」
(このベッド……買おうって言ったの私だよね……
この薄着で雪杜と一緒に寝るとか、最高すぎるんだけど)
咲良は頬を赤くしながら、不意打ち気味に言った。
「私、雪杜と寝たい!」
「え」
(ド直球できた!)
御珠の表情がすっと固まる。
「ならぬ」
「なんで!?」
「澪と約束した。雪杜が指一本触れぬようにとな」
「む!御珠ちゃんはいつも雪杜と一緒に寝てるから譲るべき」
「ならぬ。そなたを傷物にして返すなど以ての外じゃ」
(なんか僕がやっちゃうの前提なんだよなぁ……)
咲良は腕を組み、むすっとする。
「雪杜は何もしないもん」
「それでもじゃ。万が一がある」
「むー」
「むー」
二人が眉間にしわを寄せて向き合う横で、雪杜が遠慮がちに手を挙げた。
「あの……三人ってのは……
狭いよね……
何でもないです……」
御珠と咲良が目を合わせる。
短い無言が行き来し、頷きが重なった。
そして――
「よい」
「分かった」
「え!?いいの!?」
御珠は譲らぬ姿勢で宣言する。
「妾が真ん中じゃ。これは譲れぬ」
咲良はあっさり頷く。
「それでいい」
(暑そう……)
雪杜は軽く絶望しつつ、それでも笑ってしまう。
二人の呼吸が、妙に揃っていた。
―――
ダブルベッドの上に三人が並んだ。
真ん中に御珠、左に咲良、右に雪杜。
天井の淡い灯りが、三つの影を静かに重ねていた。
(暑い……)
雪杜がほんのわずかに身じろぎすると、御珠が即座に反応する。
「文句を言うでない」
「言ってないよ」
「顔に出ておる」
「ふふ」
咲良の小さな笑いが、布団の中でふわりと揺れた。
「修学旅行みたいだね」
「そうじゃな」
「だね」
三人の声が重なると、心臓の鼓動まで揃いそうだった。
「何か話してよ」
「うむ。雪杜よ、頼んだ」
「えー」
(何話せば……)
雪杜は少し考え、話題をひねり出す。
「2組の様子ってどう?」
「すごく平和だよ」
「平和じゃな」
「1組は?」
「まぁまぁかな。
佐々木が思ったより大人しい」
「佐々木?」
「そう。去年、御珠が一刀両断してたあれ」
「あー、あの……」
「そんなこともあったかの」
「御珠ちゃん、冷たい」
「興味がないのじゃ」
「ふふ」
「ふふ」
軽い笑いに包まれる。
けれど、笑いが引いたあと、部屋の音が急に少なくなった。
咲良が布団を握り直し、ぽつりと尋ねる。
「ねぇ、雪杜」
「うん」
「せっかくだから、御珠ちゃんと出会った時のこと教えてよ」
言葉が止まる。
二人の呼吸がそろって浅くなった。
(あ、なんかまずいこと聞いたっぽい)
咲良の胸がざわつく。
「咲良には話したこと……なかったね……」
「嫌ならいいよ……」
雪杜はゆっくり息を入れ、決意を固めるように目を閉じた。
「いい。話す。
聞いて欲しい」
「うん……聞く……」
部屋の張りが変わる。
御珠も静かに顔を向けた。
雪杜は天井を見たまま、震えを喉の奥で押し込むように言った。
「御珠に会った日さ。僕、死のうとしてたんだ……」
「え……」
咲良の声が掠れる。
雪杜は視線を外さず、声をつないだ。
生まれつき異常にもてること。
本人にはどうしようもないのに、それだけで周囲が歪んでいった。
保育園の頃はまだよかった。
小さな誤解や嫉妬があっても、笑い話にできる範囲だった。
小学校に入ると、状況は一気に悪化した。
仲の良かった友達同士が喧嘩し、教室の視線が尖っていく。
理由は「雪杜が中心にいる」――それだけだった。
本人の意志なんて関係なく、周りの関係は勝手に崩れていった。
教室に行くと、みんなが自分の顔色をうかがう。
その視線に耐えられなくて、雪杜は学校を休みがちになった。
「それでも家では……母さんが支えてくれてて……
まだ、なんとか頑張れてたんだけど……」
言葉が揺れた。
“母”という言葉に、特別な痛みが宿っているのが分かる。
ある日、その母さえも、“欲望の対象”として雪杜に触れようとした。
現実とは思えないほど悪夢で――
でも、起きていたのは夢なんかじゃなかった。
父は母の懺悔を聞き、「もう一緒に住めない」と言った。
そして雪杜を祖父の家へ預けた。
転校先では、今度は担任教師に襲われかけた。
「……なんで、って思った。
どうして僕だけ、って。
誰が悪いんだよ、って……
考えても……答えなんて出なくて……」
だから雪杜は、誰とも会わず、誰にも触れず、部屋に閉じこもった。
それでも祖父は、クリスマスも、誕生日も、何も言わずに小さなケーキを買ってきた。
ひとり部屋に閉じこもる孫に、何度もそっと声をかけてくれた。
「……おじいちゃんは優しかった。
優しかったんだよ……」
雪杜は手で顔を覆いながら続ける。
「でも……
それでも……寂しかったんだ」
祖父がどれだけ優しくしてくれても、家の中に笑い声は灯らない。
誰かと目を合わせるぬくもりもない。
ケーキの甘さが、逆に胸を締めつけた。
「そして……お正月も、また一人かって思ったら……」
声が崩れる。
「……もういっかなって……」
涙がこぼれた。
頬を伝い、布団に落ちる。
「それで山に入ったんだ……」
言葉が途切れた。
痛みが、そのまま部屋の隅々に広がっていく。
咲良は息を止め、御珠はまばたきも忘れたように動かない。
「そしたら……御珠がいたんだ」
雪杜の表情がわずかにほどける。
けれど涙は乾かない。
「ボロボロの神社で横になってたらね。
ここで何してるんだーって」
「……」
「最初は怖かったよ。
こんなところに誰かいるとか思わないじゃん」
雪杜は弱く笑った。
笑いは涙で濡れていた。
「でもね……御珠が」
御珠が息を呑む。
「僕の心臓の音が怖いって言ったんだ」
「え……」
咲良が思わず声を上げる。
「神様なのに怖いって言うんだよ。
なんか……おかしくて。
死にに行ったのに、笑っちゃってさ」
部屋の音が消える。
御珠は目を閉じ、胸に手を置いた。
(あの夜、そなたの心臓の音が本当に怖かったのじゃ……
でも、それゆえ放っておけなかった)
「そして御珠に救われた。
学校にも復帰して……あとは咲良も知ってるはずだよ」
雪杜の顔は涙で濡れていたが、隠す素振りはなかった。
その涙が、三人を確かにつないでいく。
咲良は胸の奥がじわりと熱くなるのを覚えていた。
(そんなことが……)
(御珠ちゃん……命の恩人なんだね)
(私が初めての友達って、すごく強い思い入れがあったんだね)
咲良は御珠の肩越しに雪杜の気配を追った。
涙はまだ頬に残っていて、息を整える音が布団の中で小さく擦れた。
「……知らなかった」
「うん」
「そんなことがあったなんて」
「咲良には関係ない話だと思ってたから」
「関係ないって……」
咲良の指先が布団を握る。
声は震えたまま、強い意志が滲んでいた。
「関係あるよ」
「咲良……」
「私……雪杜の彼女だし……
関係ないわけないじゃん」
部屋の音が落ちる。
三人の呼吸だけが残る中、御珠がゆっくり口を開いた。
「……妾も」
「え?」
「全部は……知らなかったのじゃ」
「御珠にも話したことなかったからね……」
御珠は目を伏せて言う。
「母親と何かあったのは分かっておったが……
そこまでのこととは……」
その声はいつもの強さではなかった。
揺れて、震えて、悔しさのようなものが滲む。
「……そうか。
そなたはそんな夜を過ごしてきたのか」
「……うん」
「クリスマスも」
「うん」
「誕生日も」
「うん」
「……独りで」
「……うん」
雪杜の鼻をすする音が、小さく部屋を震わせた。
御珠は天井を見上げ、胸の奥で言葉を反芻する。
(妾がもっと早く気づいてやれれば……)
(いや……それは妾の傲慢というもの)
(でも……寂しかったのじゃな……ずっと)
御珠は静かに雪杜へ身体を寄せた。
胸に満たすのは、慰める意志だけ。
そっと抱きしめる。
「……妾がおるのじゃ」
「……うん」
「ずっと、おるのじゃ」
「……うん」
その腕に包まれた瞬間、咲良がふいに布団から抜け出した。
「咲良?」
咲良は雪杜の反対側へまわりこむ。
そのままベッドに潜り込み――雪杜の身体をぐいっと真ん中へ押し込んだ。
御珠が弾かれたようにずれる。
「咲良!?そなた、何をしておる!」
玉突きのように御珠も押し出される。
咲良は自分の場所を作ると、遠慮なく雪杜に抱きついた。
「ちょ、約束は!?」
「雪杜からは触ってないよ」
「そういう問題じゃ……!」
御珠がじとっと咲良を見る。
「……そうじゃな」
「御珠まで!?」
「咲良から触れたのじゃ。
雪杜は何もしておらぬ」
「屁理屈だよ!!」
「ふふ」
「ふふ」
(二人してグルになってる……)
咲良は雪杜の胸に額を押し当て、絞り出すように囁く。
「雪杜……私もいるよ……
もう寂しくないよ……大好き……」
御珠もそっと手を伸ばした。
「妾もじゃ……大好きなのじゃ……」
(……嬉しいけど、暑いし鼻かみたい)
雪杜は心の中で弱く悲鳴をあげつつ、それでも涙があふれた。
雪杜を真ん中に、三人が寄り添う形になる。
御珠が左。
咲良が右。
しばらくすると、咲良の寝息が静かに聞こえてきた。
「……雪杜」
「うん」
「話してくれて……よかったのじゃ」
「……うん」
「咲良にも、妾にも」
「……うん。なんか、話せた」
御珠は眠たげに瞬きしながら、胸の奥でそっと呟く。
(咲良がおったから話せたのじゃな)
(妾にも言えなかったことを)
(それでよい)
(咲良がおると、家の色が違う)
御珠もゆっくり目を閉じた。
雪杜は二人のぬくもりの間で、小さく息を吐く。
(この三人で……ずっと笑っていたい)
(それだけのことが、すごく大事だと知った)
(……絶対に、手放したくない)
夜は静かに、更けていった。




