#77-12「次の現場へ、王都を目指して」
翌朝――
俺たちはザルガードの砂走車乗り場に来ていた。
「それで、次は南部だったよな?」
「うん。ラグナードだね」
リュカが答える。
「でも、まずは王都に戻るよ。そこから南部行きの砂走車に乗り換えられるから」
「なるほど。じゃあ、また一日揺られるわけか」
「そういうこと!」
……この世界、移動だけでも結構大変だな。
元の世界なら電車一本で済む距離なのかもしれないが、ここには電車なんてない。
まあ、砂の上を船が走ってる時点で十分おかしいけど。
「おーい! キョウマ!」
聞き覚えのある大声が響いた。
振り返ると、大柄な猪獣人がこちらへ歩いてくる。
「おお、ガンツ!」
「なんだ!もう行っちまうのか!」
「ああ。今度は南部だ」
「南部か!忙しい奴だな!」
「お前に言われたくないわ!」
ガンツが豪快に笑った。
「まあ、向こうでも頑張れよ!何かあったらまた声をかけてくれ!」
「おう!そっちも橋の管理、しっかり頼むぞ!」
「誰に言ってやがる!俺たち工兵隊の仕事だぞ!」
「ははっ、そうだったな!」
ガンツが大きな手を差し出した。
俺はその手を握り返す。
「じゃあな、ガンツ。また会おうぜ」
「おう! またな、キョウマ!」
……いいおっさんだったな。
俺たちが砂走車へ向かおうとした、そのとき。
ガラガラガラ……
大きな荷車が何台も、乗り場の脇を通り過ぎていった。
その周囲には、大勢の兵士たち。
……ん?
「なあ、ガンツ。あれ何だ?」
「ああ、王都へ向かう部隊だよ」
「王都?」
「おう。向こうじゃ最近、随分と物騒なことになってるらしい」
「物騒?」
「ああ。物資の流通が滞ってるうえに、盗賊やら魔獣やらが増えてるそうでな。王都から応援の要請が来てたんだ」
……へえ。
王都でもそんなことになってるのか。
「それで、レオンが兵隊を?」
「おう!昨日のうちに派遣を決めたらしいぜ!」
ガンツが胸を張る。
「うちの閣下は仕事が早いからな!」
「へえ。あいつも大変だな」
「お前、本当に他人事だな!」
「いや、俺は軍人じゃないし!」
すると、隣にいた蓮が口を開いた。
「でも、王都の治安を守るのは重要な仕事ですよね」
「ああ。王様がいない今、何かあっても対応できる人が限られてるんだろうな」
そう言うと、リュカが小さく頷いた。
「レオン様が動いてくれるなら、王都の人たちも安心するんじゃないかな」
「そうだな」
俺は通り過ぎていく兵士たちを見る。
食料らしき袋を積んだ荷車。
その後ろには武装した兵士たちが続いていた。
……なるほど。
あいつはあいつで、困ってる人を助けに行くわけだ。
「よし!俺たちも行くか!」
「うん!」
そんなやり取りをしながら、俺たちは砂走車へ乗り込んだ。
やがて、車体がゆっくりと動き始める。
窓の向こうでは、ザルガードの巨大な城壁が少しずつ遠ざかっていった。
北の鉱山に続いて、東の補給路も何とか直った。
次は南部だ。
「なあ、ルミナス」
ばふっ!
「今度は井戸の掃除かもしれないぞ?」
ばふばふっ!
……おお。
めちゃくちゃやる気じゃねえか。
「キョーくん、井戸の掃除だけで済むとは限らないんだからね?」
「分かってるって!」
「本当に?」
「何で毎回疑うんだよ!」
チャピが呆れたように笑った。
俺もつられて笑う。
砂走車は西へ向かい、広大な砂漠を走り続けた。
目指すは王都ヴァルグラン。
そこから南部ラグナードへ。
……しかし、まさかこの大陸で、こんなにあちこちの現場を回ることになるとはな。
異世界に来ても、結局やってることは変わらない。
俺は窓の外を眺めながら、背もたれに体を預けた。




