↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
65/107

#65「王家、盛大に取り乱す」

国王の声が、妙に低くなった。


「チャルディアノクス……今、この男をキョーくんと呼んだのか?」

「呼んだわよ」

「なぜだ!!」


突然、謁見の間に声が響いた。


「……だって……ずっとそう呼んでるから」

「ずっとぉぉぉぉ!?」


国王が勢いよく立ち上がった。


「チャルディアノクス!お前は分かっているのか!?我らエルフにとって愛称を付けるということが、どういう意味なのか!」

「分かってるわよ!」

「分かっていてキョーくんと呼んでいるのか!?」

「そうよ!」

「そうよぉぉぉぉぉぉぉ!?」


国王の顔が引きつった。


……何だ。


さっきまでの威厳はどこへ行った。

その隣の王妃だと思われる女性が楽しそうに口元へ手を添える。


「あらあら」

「チャルディアノクス!!」


少し離れたところにいた若い男が立ち上がった。


「お兄様まで何よ」

「いつからだ」

「何が?」

「キョーくんと呼び始めたのは」

「最初からだけど」

「最初から!?」

「お姉様!?」


今度は小さいエルフが声を上げた。


「何よ!」

「そんなの聞いてない!」

「言ってないもの!」

「どうして!?早く教えてよ!!」


そう言いながら、なぜか目を輝かせている。


「待てぇい!!」


国王が鬼の形相で俺を指さす。


「では、そなたは我が娘を何と呼んでいる!」

「えっ!?……チャピ……だが?」


静かになった。


四人の視線が一斉に俺へ向く。


「……何だよ」

「……チャピ……?」


国王が呟く。

王妃が目を見開く。

兄が固まる。

妹だけはさらに瞳をキラキラさせている。


「お前まで愛称で呼んでいるのか!!」

「……俺が付けたんだぞ?」

「付けたぁぁぁぁぁぁ!?」


国王の絶叫が響いた。


「キョーくん!」


チャピが慌てて俺を見る。


「何だよ。本当だろ?」

「そうだけど今それ言わないで!!!」


王妃がにっこり笑う。


「まあまあ」


なぜだろう……猛烈に嫌な予感がする……。


「つまり、お互いに愛称で呼び合っているのですね」

「そうなるな」

「キョーくん!!」


なぜ怒る!?。


「いつからだぁぁぁぁぁぁ!!パパは聞いてないぞ!!」

「お父様に言う必要ないでしょ!」

「ある!!」「ない!!」「ある!!」「ないってば!!」

「チャルディアノクス」


兄が低い声を出した。


「今まで一度も聞いていない……」

「だから言ってないもの」

「なぜだ!?……なぜ手紙の一つ送らない!?」

「何でお兄様にまで報告するのよ!」

「!!……兄だからだ!」

「お姉様ぁ!その人のどこが好きなの!?」

「なっ!?」


チャピの顔が一気に赤くなった。


「誰が好きって言ったのよ!!」

「違うの?」

「それは……!」

「ほう……」


国王の目が光る。

兄も俺を見る。

王妃はニコニコと笑う。

妹は嬉しそうだ。


……帰りたい。


「皆様」


ノアが一歩前へ出た。


「!?お前は黙ってろ!!」

「まだ何も言っておりませんが?」

「言う前から分かる!!」

「ご安心ください。私はキョウマ様の妻ですので」

「違う!!」


俺とチャピの声が重なった。


また、静かになった。

四人がゆっくりノアを見る。

次に、俺を見る。


「……妻?」


国王の声が低くなる。


「違うぞ」

「はい。妻です」

「違う!!」

「キョウマ様ったら、皆様の前だからと照れて――」

「照れてねえ!」

「あんた何言ってんのよ!!」

「事実になる予定を少々先取りしただけですが?」

「その予定は存在しない!!」


兄が俺の前へ出た。

さっきまでより明らかに目が怖い。


「……キョウマ殿」

「……何だ」

「詳しく聞かせていただこう」

「何を?」


国王も来た。


「妻とはどういうことだ!」

「だから違う!」


妹まで詰め寄ってくる。


「じゃあ、お姉様とはどういう関係なの!?」

「仲間」

「キョーくん!」

「!?何でお前まで怒るんだよ!」

「だって!仲間って……もう少し何かあるでしょ!」

「何かって何だよ!?」

「では、そちらの女性とは?」


王妃が微笑む。


ノアを見る。


「勝手についてきた」

「キョウマ様!?」

「事実だろ!」

「ひどいです!よよよ……」


わざとらしく顔を伏せる。


「昨夜はあれほど激しく――」

「何もしてねえ!!」

「昨夜だとぉぉぉぉ!?きさま!!そこへ直れ!!」

「昨夜とはどういう意味だ!」


国王と兄まで俺へ詰め寄る。


「何もない!」

「お姉様!」

「私に聞かないでよ!!キョーくん!あいつ黙らせて!」

「何で俺が!」

「あらあら。あなたの妻なんでしょ?」

「お母様まで乗っからないで!!」

「皆様、落ち着いてくださいませ」


ノアが言った。


「お前が言うな!!」


謁見の間が、一気に騒がしくなる。

ノアはさらに何か言おうとして、チャピに口を塞がれている。

俺は天井を見上げた。


……あだ名を付けただけで、なんでこんな騒ぎになってんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。