みち流応援の話
四月後半の祝日。
「それで、まあ川辺くんを振ったわけよ」
私の言葉に川辺くんのことが嫌いなみちは頷いた。
「あんな女々しい奴と付き合わないほうがいいよ」
みちは川辺くんと小学校が同じで、当時から苛められっ子だった川辺くんのことを内心苦々しく思っているらしい。
私は彼女を下手に刺激することもないかと思って、川辺くんを庇う真似はしなかった。
「っていうか、コウミはいつ田宮くんに告白するの?」
みちに尋ねられて私は『う~ん』と唸る。
「三年生になったら?」
「受験生じゃん! っていうか、今年からもう違うクラスで全然接点がないのに、誰かに取られたらどうするの? それに、三年生になるまで田宮くんなんてブサイクを好きで居続けなきゃいけないの? もう告ろうよ、もどかしい!! んで、振られたら次いこ次っ」
みちは私の携帯を取り上げて田宮くんの番号を選択し、発信ボタンを「押さないでー!」「押すわー!!」
プルルルルルルル!
あぁ。全然心の準備ができていないのに。
ガチャ。田宮くんが電話に出る音が聞こえた。
「もっもしもし! 田宮くん?」
『そうだよ』
いたって正常な田宮くんの声。なっ。なんていえば、良いのだろう!
「ええと、今週の金曜日、空いてル?」
『声裏返っているぞ。ええと、予定は入っているけど……』
早くも撃沈。せっかく頑張ろうとしたのに。
「そ、そう……」
『何かあったのか?』
「ううん! 予定があるならいいの」
ああ。できることなら早く電話を切りたい。
でも、珍しく田宮くんは優しかった。
「いや、でもそんなに優先順位が高くない用事だから、とりあえず用件を言ってみ?」
なんでこういう時ばかり優しいんだよー! きゅんとしちゃうじゃないかー!!
っていうか用件って『あなたに告白するためのアポイントを取りたいんです』って言えるわけないでしょー!!
「…………」
私は黙って携帯電話を耳から話す。
「みち!! 無理、無理ッ!!!」
私はみちに抱き着く。
「がんばって!」
みちはとにかく励ます。
ちょっとして落ち着いたので、私はまた電話に戻った。
「え、えとアーユーオーケイ?」
『お、おう』
「金曜日にですね、お話があるんですよ」
『う、うん』
「で、待っているから」
『いつ!?』
「ほ、放課後」
『どこで……?』
「ええと下駄箱の前で!」
『わかった』
「じゃあよろしくお願い致します。失礼致します……」
そうして私は電話を切った。
「よし!! じゃあ、ひさきちゃんと松美ちゃんと塚本さんと、増谷くんと染川くんと夏目くんにメールするかな。『金曜日に告白します。振られる可能性大なので、そしたらやけ食いに付き合ってください!』」
「そこまでしないと告白できないの!?」
「っは! これで告白できなかったら、とんでもないヘタレだとみんなに思われるかな」
「心の中ではみんなそう思っても、『次頑張ればいいよ!』って言ってくれるかもね……」
「っていうか、『無理、無理』って声絶対聞こえたよね! 田宮くんに絶対変に思われた!」
「それでもちゃんとアポイント取ったんだからいいのよ! 忘れなさい!」
だ、大丈夫かなぁ……。




