塚本さんはぼっち、の話
塚本さんと私は去年から仲が良かった。
去年の一年間で、三回学校外で遊んだことがある。
そのうちの一回は私の家の近所で偶然会って、そのまま一緒に私の母校(中学)に行った。
私の元担任は塚本さんのことをハーフのイケメンと間違えて、塚本さんはちょっと嬉しそうだった。
彼女はベリーショートの金髪を持つ、フィンランドと日本のハーフの美少女だ。
でも、常にジャージ。
背は高いけれど、華奢な体型で胸が無い。
遠目で見ると中学生男子にしか見えなかった。
私服は毎回青いTシャツに迷彩柄のズボンにリュック。毎回服は変えているらしいが、はっきり言って同じようなものだ。
眉毛も整えていないし、洒落っ気はゼロ。
それでも笹塚ちゃんよりも誰よりも美人である。
ただし、喋らない。
しかも根暗な雰囲気も相まって誰も話しかけず、結果今年もクラスで忘れ去られた存在に。
美人がモテるわけではない。確かにそう思う。
美人がモテるなら、私はとうに一回くらいは告白されていていいと思う。
自分でそう言ってしまう性格がいけないのだ。
塚本さんもとっつきにくすぎるからモテないんだと思う。
そうして私達みたいに、顔は可愛くて性格に可愛げがない女は、男子からも女友達からも可愛いと言われない。
笹塚ちゃんのように社交的で、自分を可愛く見せるのが上手な子が可愛いと言われるのだ。
「私のお喋りと間抜けと生真面目は治らないけどさ、塚本さんはもったいないと思うよ。もうちょっとにこにこすればいいのに」
図書室。今年は一緒に図書委員になった塚本さんに、私は言った。
「別にいいよ。この学校の人と仲良くしたいと思わないし」
自分をぼっちにする学校は確かに嫌いなのだろう。
「でもなあ……」
「ていうか、中間テストも終わったし、マックにでも行かない?」
「え? いいけど」
塚本さんからのお誘いは初めてかもしれない。ちょっと嬉しかった。
***
マクドナルドにて。
「あたしのこと、どう思ってる?」
塚本さんに尋ねられて、私は真意がわからずちょっと困った。
「他の女子と違って、シンプルにコミュニケーションがとれるから、一緒に居て楽だな、と……」
「そうなんだよ」
塚本さんは低い声で溜息を吐く。
「僕は女じゃないんだ。心がね」
性同一性障害、というものだと塚本さんは言った。
「引いた?」
尋ねられて、私は首を横に振る。
「元から塚本さんのこと男みたいだと思っていたし」
「そっか」
そこで生まれる沈黙。
「あのね、私も……」
私も自分がアスペルガー症候群とADHDを併せ持つ障害者だと言った。空気が読めなくて落ち着きがない障害だと簡単に説明も加える。
「知ってたよ」
塚本さんの答えは意外なものだった。
「自分のことを調べる時に、発達障害も調べたから」
やはり彼女は頭が良い。私なんかよりずっと。
知らないふりを今までしてくれていたのだろうな。
「まあ、お互い色々あるけど」
私は塚本さんに微笑みかける。
「うん」
「強く生きていこうね。頑張ることは本来、楽しいことなんだから」
塚本さんは真顔で頷いたのだった。




