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19/30

塚本さんはぼっち、の話

 塚本さんと私は去年から仲が良かった。

 去年の一年間で、三回学校外で遊んだことがある。

 そのうちの一回は私の家の近所で偶然会って、そのまま一緒に私の母校(中学)に行った。

 私の元担任は塚本さんのことをハーフのイケメンと間違えて、塚本さんはちょっと嬉しそうだった。

 彼女はベリーショートの金髪を持つ、フィンランドと日本のハーフの美少女だ。

 でも、常にジャージ。

 背は高いけれど、華奢な体型で胸が無い。

 遠目で見ると中学生男子にしか見えなかった。

 私服は毎回青いTシャツに迷彩柄のズボンにリュック。毎回服は変えているらしいが、はっきり言って同じようなものだ。

 眉毛も整えていないし、洒落っ気はゼロ。

 それでも笹塚ちゃんよりも誰よりも美人である。

 ただし、喋らない。

 しかも根暗な雰囲気も相まって誰も話しかけず、結果今年もクラスで忘れ去られた存在に。

 美人がモテるわけではない。確かにそう思う。

 美人がモテるなら、私はとうに一回くらいは告白されていていいと思う。

 自分でそう言ってしまう性格がいけないのだ。

 塚本さんもとっつきにくすぎるからモテないんだと思う。

 そうして私達みたいに、顔は可愛くて性格に可愛げがない女は、男子からも女友達からも可愛いと言われない。

 笹塚ちゃんのように社交的で、自分を可愛く見せるのが上手な子が可愛いと言われるのだ。

「私のお喋りと間抜けと生真面目は治らないけどさ、塚本さんはもったいないと思うよ。もうちょっとにこにこすればいいのに」

 図書室。今年は一緒に図書委員になった塚本さんに、私は言った。

「別にいいよ。この学校の人と仲良くしたいと思わないし」

 自分をぼっちにする学校は確かに嫌いなのだろう。

「でもなあ……」

「ていうか、中間テストも終わったし、マックにでも行かない?」

「え? いいけど」

 塚本さんからのお誘いは初めてかもしれない。ちょっと嬉しかった。

***

 マクドナルドにて。

「あたしのこと、どう思ってる?」

 塚本さんに尋ねられて、私は真意がわからずちょっと困った。

「他の女子と違って、シンプルにコミュニケーションがとれるから、一緒に居て楽だな、と……」

「そうなんだよ」

 塚本さんは低い声で溜息を吐く。

「僕は女じゃないんだ。心がね」

 性同一性障害、というものだと塚本さんは言った。

「引いた?」

 尋ねられて、私は首を横に振る。

「元から塚本さんのこと男みたいだと思っていたし」

「そっか」

 そこで生まれる沈黙。

「あのね、私も……」

 私も自分がアスペルガー症候群とADHDを併せ持つ障害者だと言った。空気が読めなくて落ち着きがない障害だと簡単に説明も加える。

「知ってたよ」

 塚本さんの答えは意外なものだった。

「自分のことを調べる時に、発達障害も調べたから」

 やはり彼女は頭が良い。私なんかよりずっと。

 知らないふりを今までしてくれていたのだろうな。

「まあ、お互い色々あるけど」

 私は塚本さんに微笑みかける。

「うん」

「強く生きていこうね。頑張ることは本来、楽しいことなんだから」

 塚本さんは真顔で頷いたのだった。

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