三学期ダイジェストと新学期開始の話
三学期は書くことがあまりない。
夏目くんからはあれから何もなかったし、テストの点数も良好だ。
三学期の目玉行事、授業発表会では俳句を飾ったが、かなりいい出来だと思う。
そういえば、田宮くんは三学期に入ってから一日一日を大切にしていた。多分、みんなと別れることが寂しいのだろう。
学期末の面談では、「田宮くんと、ひさきちゃんと松美ちゃんと増谷くんと川辺くんと同じクラスにしてください!!」ときっちり先生に頼んだ。
誰か一人くらいは一緒のクラスにしてくれるだろう。私が人間関係を構築することが苦手なアスペルガー症候群だと知っているし、書道の授業で佐間くんやギャルと問題を起こしたことも先生は了解済みだ。
――――と思っていたのに。
廊下に貼り出されたクラス表。
一組――――私。
二組――――川辺、神田島、相沢。
三組――――田宮、染川、増谷、笹塚。
ええええええええええ!!!!!!
全員引き離しますか!?
っていうか笹塚ちゃんが田宮くんとまた同じクラス!?
なんでそんなに私に厳しいの!?
田宮くんが笹塚ちゃんのことを好きになったらどうしてくれんのよ!!!!
「……うげ」
隣でクラスを確認していた田宮くんが私を見てちょっと喉を詰まらせる。なにがうげ、だよ。
仕方なしに教室に行くと……。
非常にアウェイ。
げっ。佐間くんがおんなじクラス……。
げっ。書道の時のギャルがいる……。でも彼女は私の悪口を言っている女子じゃなかった。庇ってもくれなかったけど。
げっ。性格が悪いことで有名なぶりっ子女子がいる……。
最悪じゃあ!!
――――三日後。
新学期の担任の先生との面談。
「望月さんは去年から成績もいいし、進路に向けての計画も言うことないくらいしっかりしているわねー」
「はい……。でもいろいろお喋りだし、困っていることもあるんですよ」
「例えば?」
「昨日、お財布失くして、一昨日、リボン失くして、一週間前に鍵と定期をなくしました。全部見つかりましたけど……」
「見つかったのならよかったじゃない。失くし物くらい誰だってするわよー」
「いや、でも。本当に困っているんです。お喋りで余計な発言をするので、去年もほとんど友達ができなかったし……」
「余計な発言って?」
「例えば、『アルバイト、マジストレスなんだけど』って愚痴ってきた子に対して『私なんて生きているだけでストレスが溜まってるよー』って答えて苛つかせたりとか」
その時は相手も相手で「望月さんはバイトしてないんだからストレスも大したことないでしょ?」と言われた。彼女は本当に疲れていて、怒らせてしまったのかもしれない。
「ああ、それは『大変ね……』って話を聞いていればよかったかもねー。でも次失敗しなければいい話なんだから」
先生はよく言えば前向きだが……。
私は学校の支援が欲しいのだ。クラス替えも全然配慮してくれなかったし、この一年間、先生の配慮が必要なのだ。
私がその旨を伝えると、先生はちょっと考えた後に答えた。
「じゃあ、困ったことがあったら言ってね。それでその時にどんな配慮が欲しいかも教えて」
この答えはかなり上出来だろう。まあ、配慮の内容くらいは自分側で考えなければいけないな。
そうして個人面談が終わった。
はあ……。かれこれ三日間、田宮くんと会話していない。
聞いた話によると、田宮くんは今年は図書委員会に入らないらしい。
ああ。田宮くんと話すための共通の何かが無い~。
もう疎遠になるしかないのか……?
「よっす! 田宮くん!!」
廊下を歩いていると、十メートルくらい先で川辺くんが田宮くんに話しかけていた。
確か、川辺くんも田宮くんと同じクラスだったよなー。
いやいや、違うクラス!!
私と一緒で、委員会も部活動も、何も共通していない。
そうだ。悩んでいないで川辺くんみたいに話しかければよかったんだ。
よし。
「田宮くん!!」
私は田宮くんと川辺くんの元へと駆け寄る。
「クラスは別々になっちゃったけど、田宮くんに話しかけるから!! 私、話しかけるスキルめっちゃあるから!!!!」
川辺くんは絶句していた。
田宮くんは何考えているかわからない顔をして黙っている。
私は返事を待つ。ひたすら待つ。目を逸らさずに待つ。
すると、田宮くんはぽつりと言った。
「よろしくお願いします……」
ちょっと嬉しかった。




