表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/30

親友の話 後編

 そろそろ帰ろうと、私と増谷くんはマクドナルドを出た。

 何線とは言わないが、私が通学で使っている電車が止まった。

 今の時刻は六時だ。

「俺もこの電車使っているんだよねー」

 困ったように頭を掻く増谷くん。

「え! 初めて知った! 家どこ?」

「水道橋」

「近いねえ! 私は飯田橋だよ」

「高田馬場の乗り換えきついよねー」

「わかるわかる!」

 通学あるあるネタで盛り上がる――――場合じゃなくて。

「増谷くん、携帯持っているかな?」

「ええと、家だね……。学校に持ってくると、ラインとかメアドとか訊かれたときに断るのがきつくて……」

「あ! じゃあ、とにかく私が親に相談して帰り方とか調べてもらうよ! 振り替え輸送やっているだろうし!」

 私はピンクのガラパゴス携帯を取り出す。

 充電が切れていた。

「…………」

「と、とりあえず! 駅員さんに相談しよう!」

 私たちは改札の方へと向かった。

 なんか、止まっているのはこの路線だけじゃないらしい。

 もう一つの学校の最寄駅の路線も止まっているようだ。

 ウチの近くまで行ってくれるバスもない。

「ええと、再開のめどが立つまでお待ちいただくか、高田馬場まで歩いていただけると……」

「まじっすか」

 増谷くんは唖然とする。

「申し訳ございません」

 深々と頭を下げる駅員さん。

 ちなみになんで電車が止まっているかというと、天気が非常に悪いからだ。高田馬場まで辿り着いたら地下鉄に乗ればいいので、電車が止まっていることはないだろうが、高田馬場までここから歩いて一時間以上かかる。しかもこの寒い中。

「どうする?」

 増谷くんに尋ねられて、私ははあ、と溜息を吐いた。

「歩きましょう。高田馬場まで」

 別に倒置法を使うほどの内容ではないが、とにかくそう決めた。

***

「折り畳み傘持っていてよかったねー」

 最初、私達は和やかに喋りながら歩いていた。

 高校の防災の授業で、自分の家までの帰宅経路を調べさせられるので、一応家までの道は知っているのだ。めちゃくちゃ遠いけど。

「そういえば、この前、いい鉄道の写真を友達から貰ったんだよー」

 増谷くんも大して機嫌は崩れていないようで、にこにこと喋っていた。

 私たちは色々なことを話した。

 例えば私は障害者で、両親が離婚して再婚していること。家庭のごたごたのせいで一時期児童相談所で生活していたこと。今の父親がホームレス関係や母子家庭などのボランティアををしていて、SNSとかものを知らない私だけど、そういう方向にだけ詳しいこと。

 増谷くんも色々話してくれた。鉄道が好きになった経緯。小学生の時に不良高校生のお兄さんが家を出て行ったこと。そのせいで、親は自分に過剰に期待するようになって、自分自身も真面目な性格だから優等生に過ごしていること。

 そんなことで私達の新密度はかなり上がった。

 だが――――ビューーーーーーーッ!

 大きな風が吹いた。傘がぶっ壊れた。近くにコンビニはない。

 私たちはずぶぬれで歩いた。

「俺、バスに乗ったらバスがスリップして死にそうになったことがあるんだよ」

 増谷くんの低い声。

「私なんて飛行機に乗った時に乱気流に巻き込まれて、かなり危険な目に遭ったことがあるよ」

 私も負けじと自分の不幸を語った。

「なんか不幸体質の俺達が二人集まると、最悪だね……」

「私達、結婚はしないほうがいいよね……」

 まあ、元々お互い好きな子が違うから、絶対ありえないけれど。

 その後、看板が落ちてきたり、チラシが顔に飛んで来たりしながら高田馬場まで何とか辿り着いた。

 ずぶぬれで電車に乗るのは恥ずかしかったけれど、周囲の人の格好も似たようなものだった。

***

 翌日。

「おはよう! 田宮くん!」

 私と増谷くんはたまたま同じ電車になって、一緒に登校していた。校門の辺りにいた田宮くんに同時に話しかける。

「おはよう。一緒に登校したのか?」訝しむような田宮くん。

「うん。なんてったって親友だからね!」

 私と増谷くんがハモると、田宮くんは口をあんぐりと開けたのだった。

「なにがあった……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ