第三十九話:申請書
晴天が続いた。
新商会は速さを維持。
北側は二割。
南側第三は三割。
数字は落ち着いている。
その朝、ギルドから封書が届いた。
差出人は管理局。
中身は一枚。
街道安定維持制度(仮称)
試行区間の公募について
若者が目を見開く。
「制度になりますか」
俺は紙を読む。
条件は三つ。
一、月間停止ゼロ
二、事故率基準内
三、余白率の明示
報告義務あり。
査定あり。
補助金あり。
新商会の代表が会議で言う。
「参加します」
即答だった。
「速さは証明できる」
北側は慎重だ。
「余白を固定される」
東側は計算を始める。
若者が小さく言う。
「三割、書きますか」
申請すれば、
余白は数字になる。
数字になれば、
評価に近づく。
封書の裏に注意書き。
例外的運用は原則不可
若者が顔を上げる。
「例外は?」
「枠に入らない」
静かな空気が落ちる。
制度は整っている。
補助金は魅力だ。
安定は評価される。
新商会は強い。
基準を満たせる。
若者の区間も、満たせる。
「申請しますか」
若者が聞く。
紙を机に置く。
「理由を書け、とある」
余白率だけではない。
なぜその配分か。
どう運用するか。
火を見る。
強い火。
弱い火。
街道は続いている。
申請は、選択だ。
書けば枠になる。
書かなければ、外にいる。
若者が言う。
「枠に入ると、楽ですか」
少し考える。
「楽になる部分はある」
視線が交わる。
「だが、例外は切り落とされる」
若者は黙る。
帳簿を開く。
――余白:三割
――事故:基準内
――停止:なし
数字は足りている。
理由は、足りているか。
封書はまだ開いたまま。
火は静かに燃えている。




