第三十五話:傾く街道
七日が十日になり、
事故はまだ起きていない。
新商会の倉庫は忙しい。
だが混乱はない。
人員は多く、
交代は滑らかだ。
「効率は正義だ」
誰かが言う。
反論は出ない。
数字が出ているからだ。
――新商会:利益上昇
――事故:ゼロ(十日間)
――遅延:最小
北側でも、変化が出た。
「余白を一割削る」
管理人が決めた。
東側はすでに混合型だ。
南側第三。
若者は帳簿を見つめている。
依頼は減っている。
急ぎはほとんど流れた。
「二割にします」
静かに言った。
俺は何も言わない。
余白三割。
二割へ。
強くしすぎない。
だが、遅れすぎない。
火がわずかに強まる。
若者は息を整える。
「全部は削りません」
「なぜ」
「怖いからです」
正直だ。
午後、急ぎが入る。
「受けます」
迷いは少ない。
夜。
――南側第三:余白二割
――急ぎ受理:一件
――利益:回復傾向
――事故:なし
若者が火を見る。
「悪くない」
その言葉に、迷いは混じっていない。
速さは、気持ちがいい。
数字が伸びる。
使いが笑う。
評価も上がるかもしれない。
街道は速くなっている。
全体の回転が上がる。
北側も、
東側も、
新商会も。
余白は削られ、
確率が信じられている。
夜、若者が言う。
「これでいいんじゃないですか」
少し考える。
「続けばな」
「続かなければ?」
「崩れる」
だが今は続いている。
それが一番、厄介だ。
火は揺れていない。
だが、
熱は上がっている。
遠くで雷が鳴る。
まだ遠い。
空気は、変わり始めている。




