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配当錬金の設計士 ―利回りで世界を再構築する男―  作者: Tone
第九章:速さの設計

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第三十四話:止まらない速さ

新商会の火は、強い。


だが暴れていない。


整然と、一定の熱を保っている。


若者が言う。


「事故は?」


「まだない」


三日。

五日。

七日。


事故報告は上がらない。


利益は伸び続ける。


――新商会:急ぎ大量受理

――利益:急増

――事故:ゼロ(七日間)


数字は雄弁だ。


商会の会議で声が上がる。


「合わせるべきだ」


「余白は削れる」


北側の管理人が言う。


「七日では分からない」


東側は黙る。


若者が帳簿を握る。


「続いていますね」


確かに続いている。


新商会は余白を最小限に抑え、

代わりに人員を増やしている。


遅れが出れば、

即座に別隊が補填する。


資本で吸収する設計だ。


「余白を置かない代わりに、

 資本を置く」


若者がつぶやく。


「そうだ」


余白=時間。

資本=予備人員と設備。


設計の思想が違うだけだ。


代表が再び現れる。


「ご覧の通りです」


穏やかな笑み。


「確率は管理できます」


「街道全体を速くすべきです」


若者が聞く。


「事故が起きたら?」


「起きません」


代表は迷わない。


「起きた場合も、我々が負担します」


責任を買う設計。


強い。


夜、若者が言う。


「余白って、弱さですか」


少し考える。


「違う」


「だが、遅い」


若者はうなずく。


「速い方が、格好いいですね」


本音だ。


強い火は、見栄えがする。


揺れていない。

音も美しい。


翌朝。


南側の依頼が減る。


急ぎは新商会へ流れている。


――南側第三:依頼減少

――余白:維持

――利益:減少


若者が帳簿を見つめる。


「……削れます」


「何を」


「余白」


その言葉が、軽くない。


「二割にすれば、追いつけます」


誘惑は、正しい顔をしている。


事故はゼロ。

利益は上昇。

確率は管理可能。


余白は、贅沢かもしれない。


火は強いほど、

人を引きつける。


俺は答えない。


選ぶのは、若者だ。


街道は速くなっている。


止まってはいない。


今のところは。

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