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配当錬金の設計士 ―利回りで世界を再構築する男―  作者: Tone
第九章:速さの設計

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第三十三話:数字で回す者

噂は、風の向きで変わる。


今度の風は、南から来た。


「大規模商会が入るらしい」


倉庫の管理人が言う。


「新しい街道設計を持っているとか」


「効率重視だそうだ」


若者が顔を上げる。


「余白は?」


「ほとんど置かない」


答えは簡単だった。


数日後、

南の入口に新しい倉庫が建った。


広い。

整然としている。

火は強い。


だが揺れていない。


代表が挨拶に来る。


「我々は数字で回します」


落ち着いた声。


「事故率は許容範囲内に抑える」


「利益は最大化する」


「余白は、最小限で」


若者が小さく息をのむ。


「止まりませんか」


「止まりません」


代表は即答する。


「我々の設計では、停止確率は三%未満です」


数字だ。


余白ではなく、確率。


「事故が起きたら」


俺が聞く。


「吸収します」


「資本があります」


確かに大きい商会だ。


小さな事故は飲み込める。


「街道全体を速くする」


代表は言う。


「余白は、贅沢です」


その言葉に、

若者の眉が動く。


夜、帳簿を確認する。


――新商会:急ぎ大量受理

――利益:急上昇

――事故:なし(現時点)


数字は強い。


商会の会議が揺れる。


「速さに合わせるべきだ」


「遅れれば取り残される」


北側の管理人が言う。


「余白を削れ、と?」


東側は黙る。


若者が小声で言う。


「正しいですね」


確かに正しい。


事故は起きていない。

利益は上がっている。


火は強い。

だが安定している。


「設計士はどう思う」


また聞かれる。


今度は、余白ではない。


速さだ。


少し考える。


「続けば、強い」


それだけ言う。


若者が振り向く。


「続かなければ?」


「大きく崩れる」


確率は低い。


だがゼロではない。


速さの設計は、

強い。


余白の設計は、

鈍い。


どちらが正しいかは、

まだ分からない。


街道は、速くなり始めている。

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