幕間 《錫杖》。《海》と和解する
少し本編から離れた話になります
主役達が盛り上がっている頃――。
「ごめんなさい! ごめんなさい!! シュトルツさん!!」
半泣き状態で縋っているのはマーレ。
「お辞めなさいっ」
そんなマーレにシュトルツは叱り付ける。
「でも……俺、シュトルツさんを……」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっているマーレにため息を吐いて、
「私達の感情より国として民に意志を汲むのが象徴でしょう」
ならばこの結果を責めるつもりはありません。
そう告げつつ、シュトルツはマーレを見る。
メイド服ではなく男性の格好。
本来の姿に戻れたのに今までの格好で見慣れていたので違和感を覚える。
「良かったですね………」
男の格好に戻れて。
「………あ。はいっ………」
少し困った様に苦笑して、頷く。
「――安心しました」
同じく苦笑い。
「実はカナリアに責められていたんですよ」
「カナリア兄ちゃんに?」
「ええ」
本当に困ったように、
「マーレを女装させるのは悪趣味だと」
私じゃないんですけど。させたのは。
「ああ………」
何も言えない。
「カナリアがエーヴィヒと同盟を結んだのは貴女に私がしていた行為が象徴を虐待していた事になるのではないかという反感だった様です」
「………」
マーレはもう何も言えなくなってしまった。
女装させていたのはシュトルツではないのだが、こうやって誤解されているのを解こうとしても無理だろう。
(広まり過ぎているだろうし……)
いや、元々性別を間違えて女装させていたシュトルツが悪いんだし。
もしかしてそれを狙っていたんだろうか女装させた元凶は。
「シュトルツさん……」
うん。大変ですね。
「マーレ……」
貴方が女性をナンパしていたのも迷惑でしたよ。
サーセン。
「それはともかく。――マーレ」
「はいっ!!」
シュトルツのこの言い方。怒られる前だと分かったのでびしりと姿勢を伸ばす。
「………姿勢を正さなくていいですよ。もうここは私の御屋敷ではありませんから」
少し昔を懐かしむように――ほんのつい先日の事だったのに――目を細めて、
「貴方は、自分の今の立場と言うる場所を分かっていないんですか!!」
もう叱り付ける立場ではないがつい言ってしまう。
人質と言う立場であったが教え子の様に接してきた。その癖はいつ抜けるんだろう。
「ここは人目が多いんですよ。国の代表としてきているのなら人目を気にしなさい」
ここでは私達は常に見られているのだ。
「あっ……」
考えてなかったようだ。
「全く……」
困った様に苦笑する。そして、
「ノーテンは…」
「はい……」
「ノーテンは、アルシャナとの交流を切る訳にはいきません」
ノーテンは民を食わせてあげられるほど食糧が作れない。
「はい……」
それは人質生活で良く知っている。
「縁を切れません」
「はい」
「なので、この件は不問にします」
その言葉にマーレは笑う。
「はい!!」
心底嬉しそうに笑うのでやれやれと苦笑してしまった。
次の話は、どこぞの王様メインで進めたいな。




