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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
幼少期。《剣》に出会う
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おまけの話  《王》。やり残した事を果たす

外伝です。人視点の話は基本本編にしないつもりです。

 さて――。


 幼い我が国の象徴。

 その象徴の幼少期の終わりの話に触れよう――。


 それは、私の死が間近に近付いているのを感じてきた時だった――。


「コンラート」

 ベットで横になっていた自分に声を掛ける人物。

「フリューゲル……」

 まさかわざわざお見舞いに来られるとは思わなかった。


「何かありましたか?」

 すでに王位から退いた身。

 象徴が会いに来る立場ではない。


「いや…、侍女からお前の話を聞いてな……」

 様子を見に来た。そう告げられて、

「お忙しいのに……」

「今の王が俺の手を煩わせないからな。そう負担でもない」

 お前と違ってな。


「手厳しいですね……」

 苦笑いする。


「静かだな……」

 窓から見える景色。

 自然の光景を切り取ったようなそんな世界。

 

 窓から数羽鳥が入ってきて、フリューゲルの肩に留まる。


 綺麗だな……。


 見とれてしまう。


「このまま……」

 このまま時が止まればいい。そうすれば、この方を自分のモノにできるのに。


「………」

 それは、無理な話だ。

 この方は象徴。

 一人のためのモノにならない。民のモノであって王ですらこの人を独り占めできなかった。


「寂しくないか?」

 妻も居ない。

 当然子もいない。


 ――看取ってもらいたい人は一人だけだ。


「いえ」

 亡くなったらきっと国葬になるだろう。


「そうか……」

 悲しいな。


 そう告げる姿に、

「剣様」

ふと、若い頃の呼び方が喉から零れる。


「餞別に欲しいモノがあります……」

 そう。もう会えない。会ってはいけない。

「欲しい物?」

 俺が与えられるモノか?

 尋ねる声に、頷く。


「貴方しか、貰えません……」

 その言葉に、

「そうか? なら、分かった」

 どんなものだ。


 その声に、近付いてくださいと手招きをする。

 それに誘われて顔を寄せられる。

 その彼女の頭に触れ。


「…っ!!」


 唇を奪う。


 ばぁん


 突き飛ばして、逃げていくフリューゲル。


「病人に乱暴ですね……」

 だけど、これでいい。


「死ぬ前に意識してもらえるようになって喜ぶべきかもう少し早く行動すればよかったと思えばいいのか……」

 迷いどころですね。


 そんな事を考えつつ、ベットに戻ろうとするが身体が想うように動かない。

 そこまで弱まってしまったのだ。


 ははっ


 力無く笑うと。ドアが開き、近付いてくる気配。


「姉さんに何をしたんですか?」

 丁寧な口調。だが、その目は敵対する男の目。


 ――ああ。彼女は罪作りだな。


 この弟も気付いてないだろう。

 姉と呼んでいる存在を弟としてではなく一端の男の目で見ている事を。


 ああ。残念だ。


 この二人の未来を見れないとは。


「自覚無いようですから教えたんですよ。女性と言う立場を」

 やり過ぎましたけど。

 そう告げると突き刺さってくる殺気。


 ああ。まあ、いいか。


 彼女を案じていた。

 優しくて弱い人。

 守る事ばかりで自分を顧みない人。


「――守ってあげてください」

 はっ

 こちらを見るもう一人の象徴。


「あの人を、守ってばかりのあの人が傷付かないように」

「――言われなくても」

 その返事を聞いて。


 ああ。それが聞きたかったのだ。


 もうやり残した事はない。



 ――――その数日後。エーヴィヒの名君と謳われたコンラート三世は逝去した。



さて、次回で幼少編は終了のつもりです。

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