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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
幼少期。《剣》に出会う
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38話  《盾》。《剣》から戦い方を学ぶ

フリューゲル「弟可愛いな」

リヒト「可愛いと思われたくない」

 踊りながらその相手とお話をして情報を引き出す。

 

 とは、言っていたけど。

(上手くいかなかった……)

 どんより。

 踊りが終わって、落ち込みつつ――顔には出さないが――姉の所に戻ると姉の踊っていたようで、踊る前に居た場所に戻っている所だった。


「お帰り」

「ただ今……」

 声を掛けられて返事すると姉は一瞬目を大きく開いて、

「上手くいかなかったのか?」

「うん……」

 期待に応えられなかった。

 内政を……お仕事を頑張ろうと思っていたのに。


「リヒト」

「はい……」

「どんな話をしたか覚えているか?」

「えっと……。フルーラは天候に恵まれているとか、今はやりは様々な柄のハンカチーフであるとか。食べ物がおいしいのが自慢とか……」

「食べ物の名前は上がったか?」

「よく覚えてない……」

「そっか」

 姉は少し考えて、

「天候に恵まれている。――今年は農作物の恵まれそうで、食べ物を輸出する必要はない。もしかしたら、他国に売る分も出来るかもしれない。隣国の反応次第で、値段を下げるかもしれない」

「えっ……⁉」

「今はいろんな柄のハンカチーフがある。――染物の技術が向上したか色の数が増えたか。職人が育ってきたから今はハンカチーフだが、そのうち服や装飾品にもこの染め物が出てくるだろう。そういう贅沢品嗜好品に意識が向くって事はフルーラの経済は安定していて余裕があるって事だろうな」

「姉さん……」

 驚いた。

 僕が聞いた話の内容でそこまで告げる姉の姿に。


「どうした?」

「なんで、そこまで……」

「まあ、予想。話の内容を聞いて予想をして国の役に立つ事に繋げる。リヒトが分からないといった食事だけど、それも肉か魚。野菜。穀物。食べ物と言ったが、それがお菓子か料理か。庶民向けか貴族か商人かそれによって推理できる物が変わる」

「………」

 姉の言葉に落ち込む。


「僕は……、そんなの分からなかった……」

 だから軽く流していた。

「最初はそんなものだ」

 周りの客に聞こえない声。


「そんなリヒトに教えとくか。今、俺らは監視されてる」

 驚いて辺りを見ようとするが、

「首を動かすな。――視線だけ向けろ」

 言われて、そっと、視線を動かす。


 そして気付く。

 談笑してる人々。だけど、視線はさりげなくこちらを向けられている。

 ――ー興一足。監視されているのだ。


「今俺らが話しているのを見て他国は判断するだろう。――象徴が二人になった。国民の意見が二つに分かれて国は真っ二つになって内乱が起きるのではないかと思ったけど、そんな雰囲気はなさそうだとか、エーヴィヒは今まで象徴を蔑ろにしてない、戦争を起こす気はなさそうだ。とかな」

 にこやかに談笑している。そんな素振りは見えない。

 ただ楽しげに語りあっているだけにしか。


「それが、内政の戦いだ」

 姉は告げる。

「ありとあらゆる情報を会話の節々で読み取って予測して対策を取る。――相手も自分の都合のいい情報を流すから信ぴょう性は疑うべきだが、そうだな……。女性の服装。装飾品。そこからその女性の国の豊かさが判断出来て流行を読み取れる。あと、男性の羽振りの良さとかな」

 まあ、俺も苦手だからそこまで言えないけどな。


「難しい……」

「まあな」

 整えられた髪を崩さない程度に撫でられる。

 仲の良さを見せ付ける策略だとすぐに判断する。


「最初は内容を覚えておくだけでいい。そこから予測するから」

 きっぱりと告げられる。

「分かった」

「で、リヒト」

「うん?」

 笑みを浮かべつつ――何時もの笑みじゃないから他者に見せ付ける代物だろう――どこか面白がるように、

「踊ったり、食事したりで情報を仕入れるのはいいが、最後は俺と踊るから覚えておけ」

 あっ、お前が誘うんだぞ。

「姉さん……」

「お前が俺と踊る事でエーヴィヒは揺るがない事とお前は俺を蔑ろにしないというのを見せ付ける。それで回避できる戦争もあるからな」

 だから誘いに来い。

 そう告げられて、

「分かった」

 頷く。

「姉さんと踊るんだ」

「ああ。体格差があって踊りにくいかもしれないけどな」

 それを聞いて、

(早く。大きくなりたいな……)

 と思ってしまった。



個人的に男装している女性が男子パートで踊るシーンは好きです。(でも、宝塚にはまらなかったな……)

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