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【最強最弱】猫を救ったら、5つの異世界まで救ってしまった!勘違い無双の英雄はヒロインたちにハッピーリタイアさせられる  作者: ニャルC


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始祖王の古墳とオーパーツ

玲姫が堺の本屋に身を潜めていたのは、決して日々の糧のためだけではなかった。

彼女の真の目的は、この地に伝わる古文書や伝承の数々をくまなく調べ上げることだったのだ。


伝承の一節には、こう記されていた。

――『三種の神器を揃えた者のみ、若津の始祖王にまみえる資格がある』


玲姫は、古より伝わるその伝承にすべてを賭けたのだ。

一行は郊外にひっそりと佇む、草深い「始祖王(武王)の墓所」と伝えられる古墳へと向かう。


ファズはかねてよりの疑問を口にした。

「武王様って、何した人なの?」


玲姫は淡々と答える。

「若津の初代城主で、武勇で空に浮かぶ船を追い返したと伝えられております」

戦艦RB2のようなものを、撃退したのだろうか?などとファズは思考を巡らせていた。


古墳内部の湿った暗がりの続く入り口付近には、奇妙な三つのくぼみが穿たれていた。

そこへ手に入れたばかりの三種の神器を丁寧に捧げてみたものの、冷たい石は沈黙を守ったまま。

何の反応も起きない。


「……まだ、何か足りないというの?」

怪訝に顔をしかめる玲姫は、純白の小袖に緋袴の巫女装束だった。

彼女は石壁の札に気付く。


腰に帯びていた短刀を抜き放ち、暗闇の中で鮮やかに舞わせた。

その鮮烈な軌跡に呼応するかのように、貼り付けられていた古い封印の札が剥がれる。

そして玲の持つ鞘へ張り付いた。


次の瞬間、地鳴りのような重々しい音を立てて、堅固な石壁がゆっくりと動き出す。

隠し通路の扉が開かれたのだ。

「――ファズ様、これをどうぞ」


隠し通路へ足を踏み入れようとするファズの背中に向け、玲姫は静かに声をかけ短刀を差し出した。

「ん?……なんで俺にこれを?」

唐突な譲渡に、ファズは思わず目を丸くして問い返す。


しかし、玲姫の瞳は揺るぎない決意を湛えていた。

「必ず役に立つ時がくる、巫女としての直感です」

ファズは小さく息を呑んでから笑みを浮かべた。

「……そうか、お守りだな」


ファズは、差し出された短刀の柄をしっかりと握り締めた。

開かれた石壁の奥へ慎重に進むと、そこには古びた石棺が静かに鎮座していた。

周囲の厳かな気配からして、ここが目的地である玄室に間違いない。


重厚な石棺の蓋が、突如として滑り開いた。

その暗がりの底から現れたのは、古の鎧に身を包み、眼窩に青白い鬼火を灯した一体の骸骨武者であった。


「――不逞なる、墓荒らしか?」

王の威厳を帯びた声が玄室の壁にこだまする。

凄まじい威圧感に玲姫は一歩も引かず、背筋を伸ばして応じる。


「私はあなたに連なるもの、若津の血を引く者です。――武王様、あなたにお願いがあって参りました」

玲の言葉を聞き、古墳の主は嗤う。

「そうか。ならば言葉の重み、その力で示せ」


伝説の英雄――武王(ぶおう)。

玲姫と玄信は瞬時に臨戦態勢を取り、並び立って対峙した。


「俺も……!」

加勢しようとファズがそちらへ踏み出そうとした、その瞬間だった。

硬質な金属音が響き、ファズの進路を遮るように、近衛兵らしき数体の骸骨武者たちが一斉に立ちはだかった。


「幽霊の類に、バーストストライクって効くのか……?いや、神様の恩寵だから大丈夫なはず」

焦燥を押し殺し、ファズは先ほど玲から譲り受けた退魔の短刀を左手に構え、右手を包み込むように黄金の粒子を練り上げる。

短刀を盾代わりに受け流し、一撃を叩き込むつもりだった。


だが――ファズを包囲した近衛兵たちは、抜刀して威嚇の構えをとるものの、不思議と自分から切り掛かってこようとはしない。

骸骨の近衛兵たちはただ無言で、しかし断固たる拒絶の気迫を放ちながら道を塞いでいる。


「始祖王と血統の継承者の神聖な戦いを、よそ者が邪魔することは許さない」

という、武人としての意思表示なのだろう。


静寂に包まれた玄室の空気を裂くように、玄信は前触れもなく鋭く踏み込み、その刀身から目に見えない斬撃

――『遠当て』を放った。重い衝撃波が直撃し、古墳の主である武王の影がわずかに揺らぐ。


「ほう……面白い芸だな、人間」

深淵から響くような武王の低い声に、玄信は動じることなく、不敵な笑みを浮かべて返した。

「お褒めに預かり光栄です、王よ」


手応えはある。

玄信の脳裏には、冷静な計算と警戒が走っていた。

金属の鎧が衝撃を和らげ、骸骨の身体相手にどこまで有効なのか判別はつかない。


武王は低く笑うと、腰に帯びていた二振りの直剣を滑らかに抜き放った。

その構えは隙がなく、まさに「二刀流」の極みだった。


「では、参る」

「――はっ、始祖王様のお相手とは一生の誉れだな」


玄信の気迫が跳ね上がり、隣に並び立った玲姫が神剣・天叢雲剣を力強く構え直す。

次の瞬間、洞内に金属が噛み合う激しい爆音が轟いた。


玲姫の振るう天叢雲剣の神気と、玄信の研ぎ澄まされた一閃が、古代の王の双剣と幾度も激しく火花を散らす。

剣戟の嵐が玄室の空気を震わせ、圧倒的なプレッシャーが周囲を圧倒した。


「……驚いたな。玲姫も大した腕前だ」

ファズが思わず漏らしたその呟きに、刀を構え直した玄信が、不敵な笑みを浮かべて答える。

「当たり前だ。……俺の弟子だからな」

そういえば、釣りをしている玄信に師匠と言ってたが剣の師匠という意味だったか。


淡海の館での一戦を思い出す。

玲姫を背中で庇っているつもりだったけど……カッコつけすぎとか、余計なお世話って思われてない?

実は守る必要なかった?と言うとヒーローの沽券に関わるな」


「『過保護』は空振りだったことに気づいて、羞恥心に悶えておるのかや?」

黒猫が、すべてを見透かしたようにハチミツ色の瞳で彼を見上げた。

「ま、守られて喜ばんメスもおるまい?」

と愉快そうにしている。


ファズは近衛兵たちに阻まれたまま、拳を固く、白くなるほど強く握りしめていた。

手には譲り受けた短刀と恩寵の「バーストストライク」はあるものの、割って入る隙はない。

今はただ、信じて見守るしかなかったと俯く。


そうすると、ファズは足元に何か落ちてることに気付いた。

「これ……歯車?サビがないけど、チタンか?オーパーツってやつかな?この文明の技術じゃ作れないだろうし」

防弾ベストのポケットに無造作に突っ込んだ。


激しい金属音と剣気が嵐のように吹き荒れた末、息もつかせぬ連撃の果てに、武王はぴたりと動きを止めた。

荒い息を整える玲と玄信の前に、武王はゆっくりと二振りの剣を鞘へと収めた。その眼窩に灯る青い光には、もはや敵意の色はなく、確かな称賛の色が宿っていた。


「――良かろう。その刃に私怨の濁りなし、その志に迷いなし。

……我が血脈を受け継ぐ者よ、その覚悟、しかと見届けた。我が力を、お前に貸そう」

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