【4-9-6】
その後はスムーズに物事は進んだ。スムーズという言い方は適切ではないか。事前に話はすべてついていたのだから。あの場はあくまで形式上でしかない。
私が王となることも、マグシアを建国することも、アイツのことも。全ては話した通りの内容だった。
……強いて予想外だったのは、私が新たな国マグシアの王になったことか。最初はマグノリアとラフェシアの同盟という形が妥協点かと考えていたが、結果として統一国となり、まさかの私が王として据えられることになった。これはマグノリア側からの後押しがあったことが特に寄与している。
全てはまるでアイツの手のひらの上のようだった。この話自体は本人からの提案であったし、ただ『まー多分いけるんじゃない? 分かんないけど、大丈夫大丈夫!』なんていつものように適当な姿には、正直呆れてものも言えなかった。
しかしアイツが言った事は、確かに有効だった。今思えばそれしか方法がなかったようにも思える。本人に聞いても『あーいいよいいよ。別に気にしないし。だって私のせいでもあるわけじゃん? だったら仕方ないじゃんね』なんて言っていて、……いやアイツ本当に意味わかっているのか?
人族と亜族の間を取り持つ上で、当然ながら双方の遺恨は無くす事は出来ない。最初は協議の場を設ける事すらも難しかった程だ。リーリア殿達に取り持って貰ったために実現したが、それでもなお相手との溝は大きかった。互いが互いを敵視してすぐにでも戦いが始まりそうだった。
『単純に人族と亜族の両方の敵になるやつがいれば、協力し合えるんじゃないの? 敵の敵は味方みたいなさ』アイツはそんな風に言っていた。
人族と亜族が一つになるための議論をする上で、やはり過去の歴史が妨げになる。であれば、論点をズラすしかなかった。
ミーム様もククル様も、それぞれの象徴で不可侵な存在。ククル様は事実とは異なるが、亜族から見ると喪ったということに違いはない。
ではそれは誰のせいか? 何が起きたのか? 憎しみを誰かに向ける事さえ出来れば、確かに亜族も人族も歩み寄る落とし所にする事はできるかもしれない。
しかしそんな役を受ける奴がいるだろうか? 普通ではあり得ない。ただアイツはそれを平然と是としていた。
『それでみんな納得なんでしょ? だったらそれしか仕方ないじゃん? 別に構わないよ。そもそも最初から受け入れていたんだし、ぶっちゃけ今更な話しだしさ』
元々そのつもりだったのだろうか? 世界の平和の為に自分が何が出来るのか。どうすることが最善か。初めから考えていたとでも? ……いやまさかな。
『だからさ、私は別にいーよ? ――世界の敵になったってさ』
「……レオ将軍、いやレオ王。お時間です」
「ああ。分かっている」
アンジュの声で顔をあげる。装いは普段の軍服ではない。戴冠式の時のような煌びやかな服装だ。
「お似合いですよ」
そんな事を言われても、無理矢理に着させられている風にしか見えない。自分で自分に違和感がなくなる時が来るのか甚だ疑問だ。
「では、あちらから」
「ああ。行こうか」
私は開け放たれた扉から外に出る。これからマグシアの建国と新王のお披露目というわけだ。
外に出ると城下に数えきれない程の人々がいることが分かる。その姿に圧倒されながらも私は一歩を踏み出す。
人族、亜族が入り混じったその光景は私が嘱望した世界。この世界を作ると決めたのは他ならぬ自分自身。
であればここに来て自分の判断を躊躇うことなど、もはや許されないだろう。
だから、これは誰にもいうまい。アイツ、スーニャの双肩に重荷を背負わせてしまった後ろめたさ、不快感さは、けして表に出してはならない。
私は息を深く吸う。
「――レオ=マグシアだ。ここに、マグシア国を宣言する」
かつてないほどの歓声が、辺りを包み込んだ。
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