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異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第4部】黄昏時

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【4-10-1】 世界の敵

「うわー、すっごい人」

「ね、ね。スーニャ、あれは? あれ」

「あ、ほらちょっと待って。もう始まるから。さっき買ったの食べてて、―― え!? もう全部食べたの!?」


『よゆー』なんて頬を膨らませながらピースをしているモノに、呆れを通り越して笑ってしまう。ハムスターのように与えたら与えた分だけ食べてしまうのではなかろうか。……ちょっと試してみたい。


「こらー、モノダメでしょ? スーニャもあんまり甘やかさないで!」


 ジーはプンプンと怒っていた。だが今くらいはいいだろう。折角のお祝いの場なのだ。


「……あ! あれってレナードじゃない!?」


 ふと上を見上げたジーが驚いた声を上げる。見てみると確かにレナードが立っていた。ちなみに当然というべきか大人バージョンである。


「結局レナードは戻る事にしたんですねー」


 私は隣で人々を鬱陶しそうにしていたリムさんに話しかける。


「まあな。私の研究は終わらん。あの位置に置いておいた方が何かと便利だろう?」


 実際この申し出をしてレナードも満更でもなかったらしい。曲がりなりもにも短くない期間を過ごした国なのだ。愛着が湧いたとしても不思議ではない。


「スーニャ〜」

「ほらあ、またジーに怒られちゃうよ?」


 服の裾を引くモノを嗜める。……ちょっと本当にジーがこっちを凄い顔して見てるんだけど。


 私たちは今ラフェシアに来ていた。というのもラフェシアとマグノリアが統一されるという噂を聞いたからだ。過去にない規模の国家併合。間違いなく歴史に残る出来事だろう。


 リムさんは『そんなもの興味はない』とバッサリだったが、私にとっては感慨深いものでもある。無理を言って見に来させて貰ったのだ。


 モノはお菓子目当て、ジーはお目付け役だ。そうなるとリムさんもなんやかんやで一緒に来る事になり今に至っている。


 ちなみに、ククルはといえば隠れ家で療養中だ。ついていきたいーと駄々を捏ねたが、彼女が生きている事が露見すれば全てが根底から崩れるために断固として止めた。


 一人にしていいのか? との懸念もあったが、本人曰く『一人でお家で過ごすなんていつぶりかな? 任せてー!』なんて、それはそれで本人も乗り気に言っているものだから任せておいた。


 リムさんがついてきたのはククルと二人になって面倒を見るのが嫌だから、なんて側面もあったりする。


 ただ確かにこの人の多さには些か辟易する。お祝いムードには納得出来るがそれにしても多い。前世でもこんな人混みは経験した事がないほどだ。


「……全くかなわんな。ほらそろそろ行くぞ」


 痺れを切らしてリムさんが帰ろうとする。それを私は慌てて止めた。


「ちょっとちょっと! もう出てきますって!」


 今日は新しい国と王のお披露目があるらしい。それだけ見て帰ろうと話していたのだ。


「……やってられんな。ここにいるもの達を皆吹き飛ばせば多少は煩わしさも失せるか」


 いやとんでもない事を言う。仮にも太古の神々として崇め祀られる存在だろうに。


「そんなことしたら、歴史に残る最悪の日になりますよ……。――あ、ほら! 出てきた!」


 レオが姿を現す。見知った軍服や鎧の姿ではなくこの場に即した装いだ。若干着慣れていない感が出ているがそれもご愛嬌だろう。


 彼女が出てきた事により大歓声があがる。拍手や指笛、レオの名を呼ぶ声はまるで肌に突き刺さるようだった。

 

 そして彼女が建国を宣言する。一段と声が大きくなる。皆が笑顔で、これから先の争いのない世界を願い喜んでいた。


「……これで、全部終わったんですね」


 私も感慨に耽ってしまう。この世界に産まれ沢山の事があった。その全てが終わった。自分が全て正しかったとは思っていない。


 ただ、自分の為したい事を為すと決め、そして実行した。改めて振り返ると、自分の事ながらまるで夢のような、非現実的なものに思えた。


「そら。これで十分だろう? 帰るぞ」


 リムさんは観衆を押し退け踵を返す。ジーも慌ててそれを追いかける。モノは『ご主人〜、お菓子は〜?』などと言っている。私もまた彼女達を追いかける。 


 最後に、私は届かないだろう事を理解しつつも戦友に激励の言葉を送った。


「――バイバイ。レオ。頑張ってね」


 願わくば、争いのない幸多い国とならん事を。


 なんてね。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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