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異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第4部】黄昏時

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【4-7-1】 ミーム

「……ようこそいらっしゃいました」

「……ました」


 居城に入って出迎えてくれたのは二人の給仕だった。真っ黒な服に身を包み、表情の変わらない様相はまるで人形のように思えた。


「……給仕のアインとツヴァイと申します」

「えっとこんにちは?」


 居城に入ってからはどのような展開になるかと考えてはいた。大方歓迎はされないと予期していたが、まさかただの来客かのように迎えられるとは。


「……御用向きはなんでしょうか?」


 淡々と話すその様子に若干気味が悪いものを感じるが、邪魔をしないのであればそれでいい。ガブリエットとの戦いでも相当に消耗してしまっていたために、これ以上力を使うのは避けたかった。


「ミームとククルに会いにきたんだけど」

「……承知しました。どうぞ」


 彼女は身体を翻し城の中を歩いて行く。私はただその後をついて行く。


 居城の中には他に人はいないようで、シンと静まり返っている。所々に趣向を凝らした飾り付けがなされているものの今の状況ではただ不気味なだけだった。


「……私がミーム達に会うことに抵抗はしないの?」


 普通素性も分からない相手を主人に会わせることはないだろう。


「……ミーム様からは、もしどなたかが訪れた際自由に通してよいと承っています」


 つまりミームは誰かが来ると予期していたのだろうか?亜族や人族? あるいは、私を。


「……あちらの塔にミーム様はいらっしゃいます」


 城の端には高い塔が見えた。その後私達は会話も無く、しばらくの間城の中を歩く。やがて塔の上階へと繋がる階段へ到着する。


「……ここから先はどうぞお一人でお進みください」

「そう。ありがと」


 礼を言い、長い階段をゆっくりと登る。途中遠くから鍵盤の旋律が聞こえた。静かでゆっくりとした音色だ。


 私は久方ぶりに聞くその音色に聞き入りつつ歩みを進めた。階段が終わった頃には大きな扉が現れた。私は意を決し扉を開ける。

 

 部屋の中まず目についたのはククルだ。彼女は初めて会った時のように椅子に膝を立てて座っていた。


 そして奥に置かれたピアノとそれを演奏しているミームが見えた。ピアノの旋律は終盤が近いのか激しさを増していた。


「……あ! スーニャ!」


 ククルが私に気づきこちらへと駆け寄ってくる。ミームもまた気づいてるのだろうがこちらを見向きもしない。


「ね! ね! やっぱりスーニャが来てくれた! 私ずっと貴方が来るって伝えてたんだ!」


 興奮しているククルをヨシヨシと撫でてあげる。彼女は気持ちよさそうにそれを受け入れていた。


 私はミームを見る。すると突如けたたましい音を立て、美しかったピアノ旋律は終わりを告げた。


「……そう本当に貴方が来たのね。ククルも言っていたけれどもスーニャ、だったわね」


 ミームはようやくこちらを見る。私もまた彼女を見返す。前に会ってはいる。ただ改めて考えてしまう。この少女によって自分達の里が滅ぼされたのかと。


「……貴方が来たという事は、ガブリエットは亡くなったのかしら?」

「ご想像の通りでいーよ」

「あらそう」


 私の言葉にミームは怒りを露わにするかと思ったがそうはならない。彼女は事もなげにその事実を受け入れていた。


「一応腹心の部下なんでしょ? 思うところとかないの?」

「……部下? ガブリエットが?」


 私の言葉に、さも意外そうに目をぱちくりとしている。


「違うわけ? そもそもアンタ達ってどういう関係なの?」

「私達? そうね……。まあ端的にいえば、野良猫とその拾い手というところかしら?」


 んーと顎に指を当て、悩んだ末の回答がこれだ。ただミームは冗談のつもりでもないらしく、揶揄っている様子はなかった。


「……それでその野良猫はどこで拾ってきたんで?」

「たまたまよ。私を見つけて助けを求めてきたからね。助けてあげたの。一緒にいた男の子はもう手遅れだったけれどね」

「男の子?」

「ええ。どういう関係なのかは私も知らないわ。ただ彼女にとっては特別な人だったのでしょうね。亡くなった時には呆然としていたわ」


 それがガブリエットが言っていた大切な人なのかは分からない。ただその彼を失った事もまた、全てを敵対視し始めた一端なのかもしれない。


「……そ。もう十分だよ」


 ただこれ以上話を聞く必要はない。聞いた所で何が変わるわけでもない。


 ――何より、私の本当の目的は目の前にいるのだから。

 

「そう? じゃあ改めて聞こうかしら。スーニャ、貴方は何の為に私に会いに来たのかしら?」 


「白々しい。ミーム、お前を殺しにここまできたよ」


 私の言葉にミームは、三日月のように口元を歪ませた。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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