11 謎の少女ヘル
「ユウセイ。合格、卵に魔力を注いでもいいよ」
ラティカさんにそんなことを言われたのは、善の都に着く数日前のことだった。
「魔力の制御も10分の1を切ったし安定している。ほかに流用しても事故は起こさないはずだ」
つまりそれは。
「免許皆伝だ。私から教えられることは、少なくとも魔力操作についてはないよ」
「ありがとうございました!」
「本当にすぐ私なんか超えていきそうだよ」
しみじみとした表情でそんな事を言うラティカさんにこう言葉を返す。
「いや、そんなことはないですよ」
「そうか、はははは」
乾いた笑みがラティカさんからこぼれる。
免許皆伝と言われた翌日から俺は魔力を卵に注ぐ。
日に日に卵から鼓動のような魔力を感じる。
孵卵器の中に入っているから毎日から拭きで卵を拭いてみる。
なにも効果はないかもしれないけど、何かしてあげたいからな。
魔力を注いで温めてやれば1ヶ月ほどで生まれるらしい。
「あと数日で善の都まで着いてしまうから俺たちがジェットイーグルの子供を見ることはないんですよね」
「もしよかったら、善の都まで行くことになったら、ぜひ家のグランハウスまで来てください。善の都の郊外にありますから」
「わかりました」
緑光の集いの皆さんとはもう7ヶ月半くらいになるのか。
感慨深いな。
善の都ディオンが見えてきた。
今まで行ったゾンダやレモート、ノワールの都よりも巨大だ。
中にも外壁があるから恐らく階級で住む場所が制限されている。
内部では貴族などが住み、外縁部に平民が住む。
中世ヨーロッパでよくあるものだ。
恐らく貴族の特権意識を強めるためのもの。
社会科学を専攻していたが、宗教系だったから最低限の知識しかないが、こういうの内郭と外郭っていうんだったか?
外壁の外に住んでいる人たちがいないのが唯一安心できるところか。
まだ治安はいいほうかもな。
この大きさならスラム街なんかもあるかもしれない。
「善の都ディオンでは、大魔法使いラッド・トールと面会する」
「ユウセイお前も来るか?」
「同席していいんですか?」
「あいつはお硬いお貴族じゃねぇから別に大丈夫だろ」
「気に入られたら何か良さげな魔導書を譲ってくれるだろうよ」
ミトンさんからラッド・トールさんについて話を聞いた。
「俺とあいつは、もともと冒険者で同じパーティーだった」
「俺は今じゃしがない商人だが、あいつは大魔法使いになっちまった」
と聞いた。
都に入り、大きな道を走り、横道に入る。
そこには冒険者ギルドがあった。
冒険者ギルドは少し小さめの大きさだった。
いつものことながら俺とデグンくんは馬車に居残りだ。
少し経ったらミトンさんが出てきて、一緒に女の子を連れてきた。
「はなせよー!」
「誰ですか、その子?」
その女の子は150cm半ばくらいの身長でプラチナピンクの髪を高めのツインテールにしている。
年齢は16か17くらいに見える。
髪留めは青い生地にキラキラとラメが入っているようだ。
「悪かったってば、謝るから離せよー!」
ミトンさんが話す。
「冒険者ギルドで護衛の募集をしてた時に財布をスってきたんだ」
「こんな女の子がですか?」
「ああ」
「親はどうした」
「いない」
「あーあ、冴えないおっさんだからカモだと思ったのになぁ」
「あんた名前は?」
「名前かぁ」
としばらく沈黙して彼女は一言「ヘル」とだけ答えた。
「捕まっちゃったし、まーなんかで償うよ」
「何で償う気だ?」
「そうだなぁ、この商隊護衛してあげようか?」
「護衛できるのか?」
「戦士としての力量はBランクくらいじゃないかなぁ」
「Bランクだって?!」
「まー、アタシの紋章は監視紋だもの」
「支援系か。支援して殴るってのか?」
「せいかーい」
「でもいま武器ないんだよね」
「俺の護身用のロングソードかユウセイの短剣を貸してやる」
「それでいいか、ユウセイ?」
「大丈夫です」
「だったら短剣かなぁ」
俺は彼女に短剣を手渡す。
「獣牙の短剣か。いい職人のものだね」
「多分ウルフかなぁ、ここらへんだとフォレストウルフのもあるけど、砂漠からきたみたいだしサンドウルフかな?」
「正解だ」
「だよねー、わかってた」
目利きはいいみたいだ。
スリしてるってことはスラムの人間かと思ったけどある程度の教育は受けてるのか?
身分相応とは思えないな。
「ヘルだったか。折るなよ?」
「折らない折らない。私短剣の扱いだけは自信あるんだよ?」
「ねー、おじさん」
「なんだ?」
「この街、いつ出るの?」
「明後日くらいだな」
「へー、意外といるんだ。まーいいや」
「明日ユウセイ借りていい?」
「なぜだ?」
「アタシのローブがスラムの奥にあるんだよねー。それ取りに行きたいけど、アタシひとりだと逃げるかもって思うっしょ?」
「だから監視役として借りたいって聞いたんよねー」
「ユウセイは俺と大魔法使いに面会予定があってな。デグンを連れて行け」
「ボク、私をちゃんと監視しといてね」
そんな事を言って彼女は笑っていたのだった。
俺はあの人を怪しく思っていた。
なぜなら、彼女からは魔力を一切感じない。
ラティカさんが言っていた「魔力が一切出ていない人間は暗殺者の可能性が高い」という言葉に俺は生唾を飲み込み、警戒を続けるのだった。
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