枕返し──マクラガエシ──
夢の中で夢を見ていた。
この夢は普通の夢ではなく、怪異によるものだと分かった。
どこかの病院のどこかの病室。僕は知らない女の子のそばにいた。
意識も無く点滴、呼吸器や心電図が音を立てている。
危篤状態なのだろう。
家族たちが、女の子の手を握りながら必死に祈っていた。
そんな夢。
能力がある者の見る夢は、何かを示唆しているという。
そこで目が覚めた。
僕の枕元。人の気配を感じて横を見る。
─さっきの女の子だ─
何か伝えようとしているが残念ながら、わからない。
唯一分かったのは女の子は実在していて、生きてるということだ。
祖父曰く─
夢には色んな意味がある。
そして、どんな意味ある夢でも出入り口は同じだ。
いつも寝るとき使ってんだろ?
夢の出入り口。寝るときに使うもの。
それを理解した途端、女の子の体が一筋の光となり、どこかへ飛んでいった。
光を追った先にあったのは古びたお寺。
境内には夜中にもかかわらず、住職が立っていた。
「あなたも光によばれてきたのですか?」
住職の手にあるのは古びた枕。
少し悲しげな瞳で枕を見つめる。
「これはとある病院で見つかった枕なんです」
住職は誰にともなく話し始めた。
昔、人間は夢を見ている間魂が体から抜け出ていると信じられていた。
その時に枕を返されると、魂は体に戻ることができなくなるという。
怪異のいたずら、寺に出るモノ、人を殺す妖怪。
(枕、返し)
その名前が僕の心にストンと落ちた
「日本のどこかに、神仏に罰当たりな場所になる病室があるそうです」
枕があったという病室。
そこでは容態が急変して亡くなる方が多いそうだ。
住職は僕に枕をわたす。
「もし可能ならばこの枕を先ほどの女の子の枕と交換してきて貰えませんか?」
僕が枕を受け取ると、風に溶けるように住職は消えてしまった。
病院の場所なんて分からないのに、僕は歩き出す。
そして見つけた女の子。
僕は女の子の負担にならないように枕を取り替える。
数日後。また見た夢の中で女の子がお礼を言っている。
その夢を見て、僕は確信する。
女の子は助かったんだ、と。
あの住職は枕返しで、枕を病院に返すという形で病院にかかっている罰あたりな部屋を吉方に変えたんだ。
そんな気がした。




