↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百鬼徒然  作者: 葛葉龍玄


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
71/74

塗り壁──ヌリカベ──

 大学に行く途中の電車の中。

 高校生らが話していた噂話。

 ちょっと意識を傾けて聞いていると、歩いていたら全く知らない場所に出た、とのこと。

 何時間も覚えのない街の中を走り周って、やっと見知った場所に出た。

 他の友達たちは「方向音痴すぎだろ」とか話していたが、体験談を話す男子は真剣そのものだった。


 数日経ち、僕もそんな話をすっかり忘れ去っていた頃。

 帰り道の角を曲がったところ、見覚えのない街に出た。

 街は昼間だと言うのに薄暗く、一切の物音がしない。

 人の声も車の音も、虫や鳥の鳴き声も。

 ただ自分の耳鳴りだけが頭に響いていた。

 道はなぜか住宅街で、道は複雑に入り組んでいる。

 明らかに怪異の仕業だが、その正体がわからない。

 訳がわからないまま延々と続く街を歩き続ける。

 時間の感覚もわからない。

 チャイムを鳴らしても人は出てこない。


 祖父曰く。

 妖怪だ怪異だってのは、なにも人を怖がらせるだけじゃねえ。

 からかって遊ぶやつもいる。

 中でも意外と厄介なのは、孤独な奴さ。

 寂しくて苦しくて。

 誰でもいいから相手して欲しいのさ。


 この怪異の本質はなんだ?

 確かに恐怖はある。しかし害や敵意といったものは感じない。

 ここに迷い込んだという高校生も、無事に現実に戻ってきた。

 なぜだ。

 僕と少年の違うところはなんだ?

 この、能力、か?

 僕は目を閉じて意識を集中する。

  どこか先の方に光が見える。

 それは心地よいものではなく、悲しい色だ。

 僕はその光の下に向かうことにした。

 その通路は行き止まり。

 しかし、壁の真ん中には人がいた。

 厳密には、人だった遺骸、だ。

 白骨化したその遺体は壁に塗り込まれるようにして、  上半身と腕だけ壁から出ている。

 これは。

 ヌリカベ。

 そうだ、塗壁だ。

 御大のアニメでは味方で頼もしいキャラだが、昔話では目に見えない壁だったり、こうして人を取り込んだりする妖し。

 僕は足元にあった棒を拾い、一見なんの変哲もない(遺体を除いて)壁の足元を払う。

 塗壁の対処法だ。

 しばらく視界が暗転する。まるで水の中に入ったような感覚があり、目を開けると僕の住む街の一角だった。

 そこに、死体があるのは除いて。


 僕は警察に電話をして、すぐに来てもらうことになった。

行方不明になっていた、若い男の子の死体。

 彼は塗壁に囚われた後、誰かに気づいてほしくて、怪異を起こしていたのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。