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百鬼徒然  作者: 葛葉龍玄


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狐の嫁入り─キツネノヨメイリ──

 大学近くを散歩することは今までなかったが、なんとブラブラしてみた。

 そうするとあることに気がついた。

 それは、お稲荷様を祀る所が多いということだ。

 狐の話は数多い。

 狐憑きと呼ばれる低級霊。

 管狐や飯綱と呼ばれる使役霊。

 妖怪として、九尾までいるお稲荷様

 稲荷神の使いとしてのお稲荷様。

 荼枳尼天と混同されたお稲荷様。

 下から上まで幅は広い。

 しかし、この地域は稲成りを語源としたウカノミタマの使いとしてのお稲荷様が多いようだ。

 ぼくがなんとなく稲荷神社を見ていると、ひとりの老婆が話しかけてきた。

 稲荷は拝めば富をもたらすが、それをなくした瞬間、祟り神になる、と。

 憑き物筋、狐憑きと呼ばれるものだ。

 老婆も去り、僕も神社を去ろうとした時。

 視線を感じた。

 振り向くと、ゆらり、と陽炎のように漂う青白い狐。


 祖父曰く。

 狐は油を飲み、小動物の骨を使い火花を起こして狐火を吐く。

 あまりいい機嫌じゃなさそうだな。

 そういう時は山や稲荷にまつわる場所には近づくな。

 

 そう言われていたが、僕は狐から逃げるようにどんどんと森の奥へ追いやられる。

 青白い狐を撒き、草むらに隠れる。

 すると、いきなり降り出す雨。

 上を見上げるが空は晴れ渡っていた。

 狐の嫁入り。

 頭によぎる。

 晴天なのにいきなり降る雨は狐が嫁に行く時だ。

 それは人間への警告。この日は山に近づくな、という脅しでもある。

 僕の草むらのすぐ奥はそこだけ木も生えず、雑草も手入れがされているかのように綺麗だった。

 僕は急いでその場を立ち去ろうとした。

 だが。

 広場には青白い炎の狐が次々と集まってくる。

そして一際巨大な狐。

 先ほどの稲荷神社にいた狐と目があった。

 狐の嫁入りを見た人間は殺される。

 僕は息を飲んだ。金縛。

 動けないのではない。

 動いたら殺されるという、恐怖の本能が僕の身体を支配していた。

 しかし。その狐は細い目をさらに細める。

 目の前で繰り広げられる狐たちの結婚式。

 僕は最後まで見ることになった。

 そして狐たちも家路に着いた頃、ようやく身体が動くようになった。

 一際大きな狐火は僕に近づくと、人の言葉で喋った。


 この事を、先ほどの婆様に伝えよ。狐はいまだに人間を監視してる、と。

 不信心者が増えるなら、祟られると覚悟しろ。


 そして僕は気を失った。

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