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百鬼徒然  作者: 葛葉龍玄


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妖狸──ヨウリ──

 久しぶりに父方の田舎に来た。最後に来たのは10年くらい前だろう。

 相変わらずど田舎で空気が綺麗。

 子供の頃は野山を駆け回るだけで楽しかったが、流石に今はそんな事で盛り上がる年でもなく。

 結局は散歩程度に終わるのだ。

 家の裏山にある川。昔はよくそこで釣りをしていたのを思い出し、釣り具を借りて川へ向かうことにした。

 神様に挨拶するのを忘れないように。

 田舎らしく、山にも川にも神様がいてそこに入る時、出るときは感謝を忘れてはならないのだ。

 僕が挨拶をしてから山に入ると不思議な感覚に襲われた。

何回か経験がある感じ。

『境い』を通り抜けた時の言葉にできない違和感。


 祖父曰く。

 妖たちは大半はもう滅んじまって普通の人間には見えん。

 俺やお前みたいな奴にしか、な。

 しかしまだ自然信仰の残る地域に行くと、たまに『境い』を抜けることがある。

 言うなれば、人間の世界と怪異たちの住む世界をわける関所だ。

『境い』の向こうは妖の世界だ気をつけろ。

 戻る方法は……。


 神に祈る。

 この山の神様は気まぐれで、こうしていたずらをする。

 この世界には人を憎悪する妖怪、人を食らう妖怪がいる。

 だから世界を分けたのだ。

 そんな奴らに見つからないよう、安全な場所でゆっくりと神様の気がすむまで休むことにした。

 半刻ほどたった時だろうか。

 がさり、と目の前の茂みが揺れる。

 そして、姿を現したのは──

 狸だった。

 狸曰く人間が迷い込んだから、向こうの世界へ帰してやれ、と。

 しかし、妖の言葉を信じていいものか。

 とは言え他に案もなく。僕はその妖狸について行くことにした。

 山を追われ、住む所をなくし、人間から逃げ切れた狸たちを御大将はこちらの世界に住まわせてるらしい。

 丁寧な言葉ではあったが要約すると。人間にはまだ恨みはあるが、人間と敵対する気は無い。しかしこっちの世界に居られるのは気分が悪いので、さっさと向こうに帰れ、だった。

『境い』を抜けるといつもの世界に戻った。案内してくれた妖狸に別れを告げて空を見上げる。もう夕方になっていた。

 この日そのまま帰ったが、妖狸のように自然を破壊され、向こうの世界に追いやられた妖怪はどれ位いるのだろう。

 そう思うと、人間の業の深さと自然と慣れ親しんだ怪異を含む動物たちの気持ちを考え、悲しくなった。

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