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百鬼徒然  作者: 葛葉龍玄


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油すまし──アブラスマシ──

 この時期になると見かけることが多くなる妖怪。

油すまし。

 油瓶を下げていると言われ、姿形は異なる。

 有名なのは、水木御大が描いた小柄で蓑笠を着て油瓶を下げた姿だが、熊本辺りの伝承だと見た目は言及されておらず鶴瓶落としのような怪異では無いかという話もある。

 姿もよくわからないが、なにをする妖怪なのかもわかっていない。

 たまに見かけるがそれでもなにをする怪異なのか、僕もわからないでいた。


 祖父曰く。

 考古学と物の怪譚は密接な関係にある。

 その土地に根付く恐怖、時には怨念や恨みが怪異の元となる。

 それは事実と幻想とが混じり合い、長い時間をかけて実体化するんだ。


 例えば雪女。

 雪山に対する恐怖が形となり実体化した怪異だ。

例えば犬神。

 相手を呪い、一族の繁栄のために犬を使った呪術。末代まで祟られることになる呪いだ。

 そうやって土地に合わせた妖怪が生まれたり、自身の成功を望み他者を虐げた物が呪いと呼ばれて後世に残る。

 現世と幽世。それは表裏一体なのだ。

 鳥山石燕あたりが洒落で作ったような物は別として、どんな怪異にも、現実にあったものがモチーフもなっているはずだ。

 ならばこの油すましも実在した人や物、逸話などがあるはずだ。

 僕はそれが知りたかった。

 自分から怪異に近づくなどもっての外。祖父からも固く禁じられていた。

 しかし、僕はどうしても知りたかったのだ。

すでにこの油すましに魅入られていたのかも知れない。

 そう思った時にはすでに遅く、僕は油すましに話しかけていた。

 その姿は曖昧模糊として、僕にもよく判別がつかない。思い浮かぶのは車の排気ガスを濃くした感じ。

匂いも油に似ている。

 それはギロリと僕の方へ振り返る。

 喉がカラカラに乾いてへばりつく。

 頭の中で警鐘が鳴り響く。

 関わるな。逃げろ。話しかけるな。今からでも遅くない。

 しかし、僕の体は僕の思い通りには動いてくれなかった。

 僕は聞く。

 お前は何者だ、と。

 奴は答える。

 油すましだ、と。

 僕は聞く。

 お前は何が元となった怪異だ?と。

 奴は答える。

 俺は油問屋だった、と。

 僕は聞く。

 油問屋とはなんだ、と。

 奴は答える。

 仕事をしないでブラブラしてるだけ、と。


 そう、油すましは油を売っているのだ。



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