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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第四十章】

【第四十章】

 虎牢関。董卓が居座る洛陽へ向かうその道に、その関所はそそり立っていた。ただそこにあるだけではない。董卓配下一番の武将、天下に猛将として知れ渡っている呂布が、洛陽に続く道の真上に本陣を置き、その門前で仁王立ちしている。さらにそこを守るように前営・内関城・長水営が置かれ、長水営一帯を火の海にする火計営や外関城が配置されている。そしてそれらを守るように呂布配下の精鋭部隊が大地を埋め尽くし、西の中衛に張遼、東の中衛に高順が控えている。まさに難攻不落である。しかし、全土の平安をとりもどすためには、ここを抜き、洛陽へ攻め上り、董卓を誅伐せねばならぬ。


「各地、反乱軍、争覇勢力の侵入を防ぐ要所を守る城は、堅牢閉城が整いました。」

「では、全軍を虎牢関へ。」

「司隷州内に侵入した各所には、放浪軍が暴れております。」

「いくつか、諸将の城が落とされた模様。」

「酷な言い方だが。」

 言葉を切って君主がいう。

「酷な言い方だが、尊い犠牲と捉えよう。今宵、なんとしても虎牢関を抜かねばならぬ。」

「御意。」

「各友好勢力から合流された猛将・智将も、心強い面々です。」

「準備を終えた武将が集まり、外関城前には、すでに300を超える部隊が集結済み。」

「まだ増えますぞ。」

「物見の知らせによれば、西の外関城前も、納富の軍勢が集結済み。時を待っております。」

「時は『推敲』の時でしたな。」


 『僧は推す月下の門』『僧は敲く月下の門』この詩は、別の次元の唐の時代、陽も暮れきり、夜の闇に包まれ人々が寝静まる中、ある寺院の門で、招かれた祝宴から戻った僧が、門を抜けようとする姿を歌った詩である。

 一人静かに門を推し開けようとする姿にするか、遠慮しながらも門を敲いて寺内の従者を呼ぼうとする姿にするか。

 その詩の作者である若者が、悩みに夢中で前も見ず歩き、はからずも高位の歌人の牛車に突き当たる。本来なら無礼打ちされるところ、何を考えていたかと問われて事情を説明し、その歌人と相談した末に、『敲く』にしたという故事となった詩である。

 たった一文字も、手を抜かず考え抜く事から、のちに文章を見直し、手直しする事を『推敲』と呼ぶようになった。


 戦勝祈願をはじめ手を携えた同盟の武者達も、ここへ来るまでに、悩み、考え、失敗し、反省し、改善を重ねた。そうやって前に進んできた。今回の虎牢関攻略に向けて部隊を精錬する為に、一時的に同盟から出てもらった仲間もいる。苦渋の決断であった。それでも前に進むしかなかった。

 やっと辿り着いた虎牢関である。後方で耐えている仲間もいる。野に降ってもらった仲間もいる。彼らの為にも失敗するわけにはいかぬ。


「諸将。虎牢関攻略には、緻密な作戦・段取りが必要です。配付された司令書を熟読し、その上で、開戦後の指示に耳を傾け、統一された澱むことのない流れの如き奮戦を期待します。」

「その通りじゃな。今こそ、我らの団結力、結束力が試される時じゃ。」

「各々、気を引き締めてまいろうぞ。」

 開戦までおよそ一時。諸将が心と体を研ぎ澄ませていた。


【章末】


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