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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第三十九章】

【第三十九章】

 魏郡東側の両埠頭防衛は、一定の押し引きがあるものの、安定していた。ある時、埠頭先に集まっていた放浪軍の数が著しく減った。

「どうやら、軍勢を集めて陽武を狙っているようです。」

「今は納富の支配下だな。放浪軍風情に抜けるのか?」

 陽武。司隷州東端の巨大関である。その頃、司隷州東部の原武郡は納富をはじめとした味方陣営が完全掌握していた。その上で味方の部隊は、西側の河南尹や、南の穎川州に集中していたので、陽部は手薄であった。そこを狙ったのであろう。

「今のうちに、埠頭防衛軍は、埠頭先の掃討を行おう。」

 若干の抵抗はあったものの、中央埠頭先の掃討は成功した。しかし、南端の埠頭先は、陽武に近いこともあり、守りが厚かった。


 一方で、陽阿と谷遠。先の戦闘が功を奏したのか、敵兵力は陽阿に集中していた。逆に谷遠が読みどおり手薄。この機に乗じて一気の侵攻を行なった。戦勝祈願の諸将は、関内で果敢に抵抗する琿烝や、陭氏から進軍する百家とも連動しながら、関内の東部を順調に制圧していった。

「ん?」

 老骨に鞭打ちながら、魏郡南端に主力を駐屯させる一方で、予備兵力で関内侵攻を進めていた昇が、南下する複数の敵軍に気づいた。

「こちらの抵抗より陽阿防衛の増強か?いや、増強という匂いではないな。確証はないが、兵力の集中の気配がする。司令部に伝えよ。老人の勘であるが、陽阿奪還を狙う気配ありと。」

 陽阿は度重なる戦乱から修復工事の最中である。修復現場の責任者の報告では、あと一日で、修復完了とのことであった。修復が完成すると、強度が著しく増す。

「敵も指を咥えて、修復完成を待つことはあるまい。戦力が集まれば、奪還に動く。」


 折悪く、陽阿防衛軍の指揮官が短期外遊の出ていた最中である。丞相が副隊長を兼任していたが、他の前線の対応で手が回らない。指揮系統が充分に機能せず、指示が後手に回った。指揮官が戻った時には、陽阿は陥落していた。

「仕方ない。後方の2城を死守せよ。しばし、耐えるのだ。無闇に反撃に出ぬように。」

 司隷で前線を一つ押し上げたばかりの君主から指示が出る。


「皆、善戦してはいるが、今後を考えると懸案がいくつかあるな。」

 智将・策士としても名を馳せた、君主・龍鬼である。常に思索が頭を駆け巡る。しかし彼とて一人の人間。彼一人に任せるようなら、いずれ限界を迎える。こういう時に必要なのは、思いを理解して、献策する仲間である。

 洛陽に迫る日まで、残る日数も見えてきた。今こそ幹部会が、いや、全将兵が自ら考え、行動することが求められる。一人一人が考える細胞として活性化してこそ、組織として大きな力を発揮する。決して無理をして自己崩壊してはならぬが、各自ができる限りを精一杯、『考えて行動する』ことが必要である。各自が考えて準備・行動ができた時、以心伝心の反射反応として素早い行動となる。もちろん、相互の連絡連携も必須。自身が行動できない時間を仲間に伝え、支援を頼む。相互に、できる事とできない事を共有して初めて、的確なフォローができる。組織活性化に必要なのは、思考と対話である。


【章末】


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