【第三十八章】
【第三十八章】
戦勝祈願が各地の戦線を支える中、穎川では納富が大進撃を成し遂げた。穎川州・南陽郡では、関内州で押されていた一党があえて放浪し、盧氏近くの埠頭で善戦して、烏の後方を撹乱していた。
一方で、陽阿と谷遠。これらの離れた2前線を行き来しながら前線を維持していたが、それは敵方にとっても同じ事。どちらを保持として、どちらに力を注ぐか。その駆け引きの得手不得手が勝敗を分ける。関内側は2同盟が連携して動いていたが、一枚岩にはなり切れておらず、苦労をしながらも戦勝祈願が単独で駆け引きを行う、その動きに敵うはずもなく、陽阿ではついに関を奪還し、合わせて谷遠でも関前を一掃して深く進軍し、その勢いは楊県に迫らんとしていた。
「楊県を押さえれば、そのまま南進し、陭氏の西をとおり、陽阿の裏へ出ることも可能。」
「焦ってはならぬ。敵地深く侵入すれば兵站は伸びて、彼我の有利不利は入れ替わる。」
「着実に、ですな。」
一方の孟津。敵連合と味方連合は3つの要所を巡る一進一退を重ねていた。しかし均衡がついに崩れる。午前中に一番南の要衝となる城を百家が抜く。そして、中央の要衝となる城へ対して、戦勝と百家が合同で攻めかかることとした。
「伝令。南の要衝、捕虜とした城が自力で解放し、いくばくかの百家の軍勢がそれらの城に挟まれた様子。」
「なんと。この状況で中央の攻略に失敗しては、また押し返されるかも知れぬ。」
中央の城。城壁の上には50を超える駐屯軍が布陣していた。
「敵も必死ですな。」
「これを落とせましょうや。」
「落とさねばなるまい。」
かくして時は来た。戦勝は魏郡等の要所を固める城を堅牢閉城とし、可能な限りの部隊を孟津に集めていた。これらが一斉に攻めかかった。50を超えた敵の駐屯部隊はジリジリとその数を減らし続け、ついに数隊が城壁に取り付いた。
「刺さったぞ。行け行け行け!兵を惜しむな!」
城壁に取り付く部隊が数隊から数十隊へ数を上げていく。ついには50隊を超える部隊が城壁に取り付いた。もちろん取り付いても振り払われる部隊が次々と出た。しかし、それを補って余るほどの部隊が次々に襲いかかかる。やがて敵城壁の耐久はジリジリと削られていく。そして。
「よし、侵入!城内制圧!百家の部隊が城を制圧したぞ。ここが新たに我らの侵攻拠点じゃ!」
「さすれば、転進。兵数・体力のある部隊を陽阿へ振り向けよ。削り落とすぞ。」
陽阿前の敵の城は、谷遠の侵攻が響いているのか駐屯兵の数はまばら。今ぞ好機と陽阿防衛隊が攻めかかる。
「取り付いたぁ!」
「は、早いな。さすがじゃ。」
「よし、流れはこちら。追い打ちをかけよ。突撃じゃぁ。」
慌てて駆け戻る敵部隊もあったがその数はわずか。さすがに戦勝も大軍勢とは行かぬものの取り付いた部隊がジリジリと城耐久を下げていく。
「下の城は堅牢閉城をしているが耐久は昼間四分の一まで下げてある。上の城の耐久を下げてやろうぞ。」
「万が一、落とし切れぬとしても、耐久を下げてしまえば、明日につながる。」
「相手はいつ落とされるか気が抜けず、戦々恐々とした夜を過ごすであろうよ。」
「第一波、退けられたか。しかしこちらの城も、耐久を四分の一まで下げたぞ。」
「よし、ここまで攻めれば良しとしよう。陽阿、駐屯防衛に切り替えるぞ。」
「十分に、相手に恐怖を与えたな。」
「これで、迂闊に谷遠へ部隊を送れまい。谷遠が今度は好機よ。」
「谷遠・陽阿。右往左往させてやりましょうぞ。」
陽阿関前を守る意味で置いた城が二つとも、1日のうちに大きく耐久を下げられてしまった。この事実は、関内の敵対軍勢にとって脅威となったことは間違いない。
【章末】




