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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第三十五章】

【第三十五章】

「・・・父上。父上。聞こえますか父上。」

 昏睡状態にあった昇が、声を聞いた。これもほっとする声であった。

「仁、か?」

「お目覚めになりましたか。ようございました。よくぞお戻りくださいました。」

「夢でな、美々に叱られたわ。」

「母上に、ですか。あああ。ありがたい、母上が父上を呼び戻してくださったか。」

 仁は、母について父の従者から聞き及んでいた。父からは多くが語られなかったからだ。

「ところで、仁。儂はどれほど寝ておったか。」

「数日でございましょうか。」

「そうか。ところで、戦線はどうなっている。陽阿は?司隷は?」

「陽阿は、餅倻隊長をはじめ皆様が守り抜いておられます。また、父上を襲った放浪軍は他の皆様が見事に討伐してくださいました。」

「であるか。ところで司隷はどうなっておる。」

「司隷は、曼荼羅様が築かれたお城を先頭に、睨み合いながら戦線を維持しておられます。さらに原武郡から南下して、新鄭を抜けて、穎川州・穎川郡まで進軍しておられます。」

「なんと、穎川にまで兵を進めたか!素晴らしい。百家や納富との共同戦線であろうが、素晴らしいな。」

「それと、父上と私は、陽阿防衛軍から離れ、孟津・司隷・穎川へ展開する部隊に配置されました。」

「そうか。陽阿は、餅倻殿がおられれば、皆様と力を合わせ守り抜かれるだろう。儂のように武功に焦ることもなく。」

「父上。失礼を承知で、申し上げます。ご自重ください。」

「うむ、わかっておる。美々にも言われたわ。儂は『ジィジ』じゃからの。お前は以前より、遠回しに儂の衰えを伝えておったな。自重する。年寄りの悪い癖じゃ、過去の栄光にしがみつき、今でも同様に動けるとおもいこんでしまう。それを止めねば、ただの老害じゃ。」

「父上。」

「お前をはじめ、若いものを立てて、儂は後方からの助力に徹するわ。」

「私は残念ながら、まだまだ非力。父上にも及びませんが、勉励刻苦、鍛錬を重ねます。」

「うむ。」


 全体を眺めれば、一時は前線膠着となっていた納富が大攻勢に転じ、版図を広げていた。敵は一段も二段も押され、必死の形相となってきた。ここはじっくりと相手の弱点を見抜き、押してゆく事になるだろう。昇も仁も、やがて同盟に復帰し、それぞれが自分の勢いで活動を始めた。


【章末】


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