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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第二十九章】

【第二十九章】

 その夜、戦勝祈願は司隷州・原武郡で大攻勢に転ずる。敵主城14、支城1を捕虜にし、重ねて捕虜になっていた友軍の城1つを開放する。敵の反撃は確かにあった。あったのだが、その勢いは無人の野を渡り歩くかのように、次から次へという勢いであった。

 前期、友軍となった戦祈の盟主を、勝願の盟主は、軍略家と評した。その本領発揮である。龍鬼は、敵兵が江南尹に流れ手薄になっていることを感じ取り、最初の攻撃場所の指示を決め、次から次へと攻略する城を決めて軍勢移動を指示する。その様はまるで、大火の炎が次々と燃え移り、あたかも大火災となるかのようであった。その速さも尋常ならざるもので、ある親子が、合わせて7つの兵器部隊を投入していたが、移動し着弾はするものの、城の耐久を削る前には攻め終わっている状態である。

「これほど、順調に終わるものなのか。」

「今宵は諸将の動きが良い。集まりがとても良い。」

「一週間のウサでも晴らすかのように、皆、猛然と戦っておるな。」

「これだけ動く兵があれば、君主殿も嬉しかろう。」


 捕虜にした鴉の城は、隘路を守るように配されていた。それが鴉には災いとなる。捕虜にした城が鴉の行軍を妨げるのだ。原武郡北部にまだいくつか鴉に属する武将の城があるのだが、これで江南尹からの援軍が届かなくなった。もう一息押し込んで、埠頭まで制圧できれば、その効果は大きい。


 また、その夕方には嬉しい事があった。修行に出ていた猛将、曼荼羅・丑縞親子が帰参したのである。その夜の攻勢で最後に敵の城を落としたのは、丑縞であった。帰参した曼荼羅・丑縞親子の動きは頼もしく、前線に限らず、後方の放浪軍討伐にも活躍していた。


 親子といえば、昇と仁である。近頃は、昇が全く姿を見せず、仁が昇の部隊も合わせて運用していたのだが、その日は、昇部隊の動きが違った。陽阿では、1軍から5軍が他の武将の占領作戦を次々と壊滅させて任務を終えると敵将を1つ2つ屠って帰城する。昇の姿が見えないにも関わらず、その動きに澱みがない。

 ただ部隊が移動する際、部隊長がとある方向を見上げる。その目線の先、丘陵の上に一人の人物がいた。司令部にいた謎の人物である。車のついた椅子に座り、戦況を睨むように眺め、時折、漆黒の杖を振るう。その杖の動きを確認した部隊長が、部隊を移動させていたのである。

「殿、あまり無理をなさいますな。」

「何を言うか。前線を長く空け、皆様には迷惑をかけた。そろそろ取り返さねば。」

「失礼を承知で申し上げますが、ただでもお年を召しておられ、あれだけの怪我をなさったのです。もう少し、ご自身をお労りください。」

「良いか。人はな、傷ついてそこから回復する時に強くなるのじゃ。二度と折られまい、二度と切られまいと。よく人は励ます時に「頑張れ。諦めるな。」という言葉を口にするが、それは復活する事を諦めるな、と言う意味じゃと儂は思う。儂はまだまだ、自分を諦めん!」


 傷つき痛みに泣く日もあるだろう。だが人として大事なのは、そこから這い上がり、立ち直ること。自分が自分を諦めぬ。これこそが大事である。


『人、必ず自ら侮りて、然る後に、人これを侮る 孟子』



【章末】


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